旋盤の種類は制御方式や構造、用途によって呼び方が細かく分かれ、汎用旋盤とNC旋盤の違いさえ曖昧なまま導入機を検討している方も多いのではないでしょうか。
本記事では旋盤を「制御方式」「構造」「用途・サイズ」の3つの軸で整理し、それぞれの特徴と選び方をまとめます。
なお、この3分類はJIS(日本産業規格)が定めた公式区分ではなく、読者が理解しやすいよう本記事で便宜的に整理したものです。加工内容に合ったタイプが分かれば、中古導入の判断もしやすくなります。
旋盤の種類はどう整理する?押さえておきたい3つの分類軸
旋盤とひとことでいっても、呼び方は数十種類に及ぶのが実情です。ここではまず「制御方式」「構造」「用途・サイズ」という3つの軸で全体像を整理します。
この分類はJISが定めた公式区分ではなく、本記事による便宜的な整理です。
旋盤も含めた工作機械全体の基礎知識は「機械加工とは?種類・加工方法・工作機械の基礎知識をわかりやすく解説」でも詳しく解説しています。
旋盤の定義とJIS B 0105:2012
JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」は旋盤分類の一次ソースです。
同規格は旋盤を「工作物を回転させ、主としてバイトなどの静止工具で外丸削り・中ぐり・突切り・正面削り・ねじ切りなどの切削加工を行う工作機械」と定義しています。
数値制御によるものは特に数値制御旋盤と呼ばれ、これが後述するNC旋盤の呼び名の由来です。
「旋盤の種類」と「旋盤バイトの種類」は別のテーマです
「旋盤のバイトの種類」を探している場合、知りたいのは機械本体ではなく、旋盤に取り付けて削る刃物(バイト)の形状分類であることが多いです。
本記事は機械としての旋盤の種類を扱うテーマのため、バイトの詳細は別記事に譲ります。工具選びで迷っている場合は、そちらを参考にしてください。
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」
制御方式で分類する旋盤の種類(汎用旋盤・NC旋盤・CNC旋盤)
制御方式で見ると、旋盤は大きく手動操作の汎用旋盤と、自動化が進んだNC旋盤・CNC旋盤に分かれます。
生産性を左右する分類軸なので、加工現場ではまずここを押さえておくと選び方の見通しが立てやすくなります。
手動操作の汎用旋盤については「汎用旋盤とは?構造・使い方・NC旋盤との違いをわかりやすく解説」で、自動化されたCNC旋盤については「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いや種類・メリット・選び方をわかりやすく解説」で、それぞれ詳しく解説しています。
汎用旋盤(JIS正式名称:普通旋盤)とは
現場で「汎用旋盤」と呼ばれる機械は、JIS B 0105:2012では「普通旋盤」が正式名称です。
同規格は「水平面内で回転する主軸、ベッド、主軸台、心押台、往復台、送り機構などからなる基本的な旋盤」と定めています。
作業者がハンドルを手動操作しながら削るのが特徴で、多品種少量生産や試作の現場で根強く使われています。
NC旋盤(JIS正式名称:数値制御旋盤)とは
NC旋盤という呼び方も現場の通称で、JIS B 0105:2012の旋盤の定義注記には「数値制御によるものを、特に、数値制御旋盤という」とあり、これが正式名称です。
NC(数値制御)とは、位置などの数値情報とプログラム指令で工具の動きを自動化する仕組みを指します。汎用旋盤に比べ、繰り返し生産の精度と効率を高めやすいのが強みです。
CNC旋盤とNC旋盤の違い
CNC旋盤もJIS用語ではなく、実務で使われる呼び方です。
制御装置にコンピュータを内蔵した旋盤を指しますが、現在のNC旋盤はほぼコンピュータ制御であるため、CNC旋盤とNC旋盤はほとんど同じ意味で使われています。
中古市場でもこの2つはあまり区別されず、自動化された旋盤として一括りに扱われることが多く、生産性を重視する場面で選ばれています。
倣い旋盤(ならい旋盤)とは――NC旋盤につながる自動化の一歩
倣い旋盤は、JIS正式表記では漢字の「倣い旋盤」、現場で使われる「ならい旋盤」はひらがなの通称です。
JIS B 0105:2012では「刃物台が形板、模型又は実物に倣って動き、それらと同じ輪郭を削り出す旋盤」と定義されています。
プログラムによる制御ではなく機構で輪郭をなぞる方式ですが、手作業からNC旋盤による自動化へ向かう過渡期の技術として位置づけられます。
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」
出典:中村留精密工業「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いは?」
構造で分類する旋盤の種類(正面旋盤・立て旋盤・タレット旋盤ほか)
構造で見ると、旋盤は主軸の向きや刃物台の動き方によっていくつかのタイプに分かれるのが特徴です。
ここでは正面旋盤・立て旋盤・タレット旋盤という代表的な3タイプを、工作機械としての構造の違いから整理します。
正面旋盤とは
正面旋盤は、JIS B 0105:2012で「水平面内にある主軸に面板を備え、主として正面削りを行う旋盤」と定義されています。
刃物台は主軸に対して直角方向に広範囲に動くのが特徴で、径が大きく厚みの薄い円筒状・円盤状のワーク加工に向いた構造です。フランジや大径プーリーなど、扁平な部品を削る場面で選ばれます。
立て旋盤(通称:立旋盤・縦旋盤)とタイプの違う倒立旋盤
立て旋盤は、JIS B 0105:2012では「垂直面内にある主軸に取り付けたテーブル上に工作物を取り付け、刃物台をコラム又はクロスレールに沿って送り切削する旋盤」と定義されています。
「立旋盤」「立形旋盤」「縦旋盤」はいずれもこの正式名称の通称です。大径・大重量のワークを水平に固定して削れる構造のため、大型の丸物加工に向いています。
主軸が下向きの倒立旋盤は、これとは主軸の向きが逆の構造です。
タレット旋盤と対向主軸旋盤
タレット旋盤は、JIS B 0105:2012で「タレットヘッドに多数の刃物又は工具を取り付け、タレットヘッドを割り出して切削する旋盤」と定義されています。
通常タレットヘッドは六角形で、段取り替えを減らせる機能が特徴です。対向主軸旋盤は、互いに向き合う二つの主軸を同期させて回転させられる構造で、複合的な加工を1台で完結させやすくなります。
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」
用途・サイズで分類する旋盤の種類(卓上旋盤・自動旋盤・精密旋盤・特殊専用旋盤)
用途やサイズで見ると、旋盤には卓上サイズの小型機から、自動化された量産機、高精度な仕上げに特化した機種、専用用途の特殊な旋盤まで幅広い種類があります。
加工したい製品のサイズや条件に応じて選ぶ軸として押さえておきましょう。
卓上サイズの機種選びは「卓上旋盤おすすめ7選|選び方と使い方を徹底解説」で、特殊専用旋盤のひとつであるねじ切り旋盤の詳細は「ねじ切り旋盤とは?仕組み・種類・加工手順と旋盤選びのポイントを解説」で、それぞれ解説しています。
卓上旋盤とは――小型旋盤・ミニ旋盤との呼び方の違い
卓上旋盤は、JIS B 0105:2012で「主として作業台上に据え付け、コレットチャックによる作業を主体とする小形の旋盤」と定義されています。
現場でよく使われる「小型旋盤」「ミニ旋盤」はJIS B 0105:2012に用語がない俗称で、サイズの小さい旋盤を指すJIS唯一の正式用語は卓上旋盤です。
サイズの境界に明確な規格値はなく、小型部品の製造や試作、教育用途などで使われます。
自動旋盤とは――単軸自動旋盤と多軸自動旋盤
自動旋盤は、JIS B 0105:2012で「カム、油圧、電気的な機構又は数値制御によって、自動的に切削を行う旋盤」と定義される機械です。
主軸が1本のものを単軸自動旋盤、一つの主軸台に複数の主軸を組み込んだものを多軸自動旋盤といい、主軸数に応じて4軸・6軸・8軸自動旋盤などと呼ばれます。
加工条件への対応力が高く、量産部品づくりに向いた構造です。
精密旋盤とは――超精密旋盤との違い
「精密旋盤」という単独用語はJIS B 0105:2012には存在しません。同規格にあるのは「Rz 0.1μm以下の表面粗さに仕上げることのできる旋盤」と定義された超精密旋盤です。
精密旋盤という呼び方はJIS B 6202:1998の普通旋盤における精度区分に由来しており、寸法公差の数値は条件によって幅があるため、詳細は各メーカーの技術資料で確認する必要があります。
特殊専用旋盤(ねじ切り旋盤・車輪旋盤・ロール旋盤など)
JIS B 0105:2012は、用途に特化した旋盤も数多く定義した規格です。
ねじ切り専用のねじ切り旋盤、鉄道車両の車輪を車軸に付けたまま外周を削る車輪旋盤、圧延用のロールを加工するロール旋盤のほか、工具旋盤・多頭旋盤・くし形刃物台旋盤など専用技術に応じた旋盤が規格に列挙されています。
それぞれ特定の用途に特化した構造を持つ旋盤です。
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」
木工旋盤は金属旋盤とは分類が異なります
ここまで紹介してきた旋盤は、いずれもJIS B 0105:2012が対象とする金属切削用の工作機械です。
同規格は「主として金属切削に用いる工作機械」を適用範囲としており、木材を加工する木工旋盤は対象に含まれません。そのため木工旋盤は、金属旋盤の分類表とは別枠の扱いです。
木工旋盤(ウッドターニング)とは
木工旋盤(もっこうせんばん)とは、木材を固定し、高速回転させながら刃物(バイト)を当てて削り出す木工技術に使う機械です。
ボウルやカップ、ペン、スツールの脚など、丸みのある造形の製造に幅広く対応できます。金属旋盤とは用途も構造も異なる、木工専用の設備です。
出典:シェアリングファクトリー「ウッドターニング(木工旋盤)とは?」
旋盤加工でできること・使われる工具の種類
旋盤の種類だけでなく、「何を削れるか」という加工の切り口も押さえておくと機種選びの理解が深まります。ここでは代表的な加工方法と、加工に使う工具の種類を簡潔に整理する内容です。
旋盤加工そのものの流れについては「旋盤加工とは?加工の種類・手順・メリットをわかりやすく解説」でも詳しく解説しています。
旋盤でできる加工の種類(外径削り・内径加工・端面加工・ねじ切りなど)
JIS B 0105:2012が定義する旋盤の加工には、外丸削り(外径加工)・中ぐり(内径加工)・突切り・正面削り(端面加工)・ねじ切りなどが含まれます。
回転する材料に刃物を当てて削る点は共通で、主軸の回転速度や送りの条件を変えれば、穴あけを含む複雑な形状のワークにも対応可能です。加工方法ごとの詳細は個別記事に譲ります。
旋盤加工に使われる工具の種類(バイト・チャックは別記事で解説)
旋盤加工で使う工具の代表格がバイト(切削用の刃物)とチャック(工作物を固定する装置)です。
バイトは刃先の形状によって外径用・内径用・ねじ切り用など細かく分かれ、チャックも保持できる材料の形状で種類が異なります。それぞれの詳細な分類は、専用の解説記事で扱っています。
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」
自社に合う旋盤の種類の選び方(新品・中古の視点で)
旋盤の種類がひと通り分かったところで、次は自社の加工内容に合わせてどう選ぶかを考えていきます。生産量や工程の複雑さ、新品・中古どちらで導入するかという視点も交えて整理する内容です。
加工内容別に見る旋盤タイプの選び方
多品種少量生産や試作品づくりが中心なら、操作の自由度が高い汎用旋盤にメリットがあります。
一方、同じ製品を大量生産する場合はNC旋盤・CNC旋盤の自動化が効率面で有利です。
複数の工程を1台で完結させたい場合は、タレット旋盤や、旋盤の発展形であるターニングセンタ(複合加工機)も選択肢になります。それぞれのデメリットも含めて比較するのが選定の近道です。
新品と中古、どちらで導入するか
高額な設備投資が必要な旋盤は、新品導入の前に中古機で同じタイプを試すという選択肢があります。中古であれば初期費用を抑えつつ、実際の操作感や加工品質を確かめられるのが利点です。
小さく試してから本格導入するという、段階的な投資判断もしやすくなります。
シェアリングファクトリーの中古工作機械売買サービスについて
旋盤の種類や選び方が分かったら、次は導入方法の検討です。
シェアリングファクトリーは、中古工作機械の売買・仲介を専門に手がけています。汎用旋盤からNC旋盤、タレット旋盤、木工旋盤まで、幅広いタイプの中古機を取り扱っており、新品導入前の試し運用や、生産設備の入れ替えといった相談にも対応可能です。
工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。
旋盤の種類についてよくある質問
Q1. 旋盤の種類は何種類ありますか?
旋盤の種類は数え方によって幅があり、JIS B 0105:2012だけでも20以上の用語が定義されています。
本記事では分かりやすさのため、制御方式(汎用旋盤・NC旋盤・CNC旋盤)、構造(正面旋盤・立て旋盤・タレット旋盤)、用途・サイズ(卓上旋盤・自動旋盤・精密旋盤・特殊専用旋盤)という3つの軸で整理しています。
木工旋盤はJIS対象外の別枠です。
Q2. 汎用旋盤とNC旋盤・CNC旋盤の違いは何ですか?
汎用旋盤(JIS正式名称:普通旋盤)は手動操作が基本の旋盤です。
NC旋盤(JIS正式名称:数値制御旋盤)は数値制御によって動きを自動化した旋盤で、CNC旋盤はコンピュータを内蔵した制御装置を指しますが、実務ではNC旋盤とほぼ同義として扱われています。
Q3. 立旋盤と普通旋盤の違いは何ですか?
立旋盤(JIS正式名称:立て旋盤)は、垂直方向の主軸にワークを固定し、大径・大重量の丸物加工に向いた旋盤です。
普通旋盤(通称:汎用旋盤)は水平方向の主軸を持つ基本的な旋盤で、主軸の向きと得意なワークサイズが異なります。
Q4. 小型旋盤・ミニ旋盤・卓上旋盤の違いは何ですか?
卓上旋盤は、作業台の上に据え付けて使う小形の旋盤を指すJIS唯一の正式用語です。
「小型旋盤」「ミニ旋盤」はJIS B 0105:2012には用語がない俗称で、明確なサイズの境界も規格として定められていません。小型部品の加工や試作、教育用途で使われる小型機です。
Q5. 自社に合う旋盤の種類の選び方は何ですか?
加工内容によって適した種類は変わります。
多品種少量生産や試作なら汎用旋盤、大量生産ならNC旋盤・CNC旋盤、複数工程を1台で完結させたいならタレット旋盤が候補です。新品導入前に中古機で試すという方法もあります。
まとめ:分類軸を押さえて自社に合う旋盤の種類を見極めよう
旋盤選びで大切なのは、名前の違いに惑わされず「制御方式」「構造」「用途・サイズ」という軸で機械の特徴をつかむことです。
汎用旋盤とNC旋盤・CNC旋盤の自動化度合い、立て旋盤やタレット旋盤の構造、卓上旋盤や自動旋盤の得意な生産量という3点を押さえれば、加工内容に合った旋盤の種類を選びやすくなります。
新品導入の前に中古機で試すという選択肢も、あわせて検討してみてください。
工作機械の売買・レンタルをご検討の方は、お気軽にご相談ください。
