大型旋盤とはどのような機械を指すのか、どこからが「大型」なのか分からず迷っていませんか。「大型旋盤」はJISで区分された正式名称ではなく、大型・大重量のワークを加工する旋盤の総称です。
本記事では定義や大型の目安、種類・用途、主要メーカーの代表機種を押さえたうえで、中古導入時の注意点まで解説します。自社の加工ニーズに合った1台を見極めるヒントが見つかるはずです。
大型旋盤とは|JISに定義のない「大型の旋盤」の総称
大型旋盤という言葉はよく目にしますが、実は工作機械の名称を定めたJIS規格には「大型旋盤」という区分は存在しません。まずは旋盤という機械の基本構造と、大型旋盤という呼び方の位置づけを整理します。
旋盤の基本構造とJISでの定義
旋盤とは、工作物を回転させ、バイト(金属を削る刃物)などの工具で削る工作機械です。
JIS B 0105:2012は旋盤を「工作物を回転させ、主としてバイトなどの静止工具を使用して、外丸削り、中ぐり、突切り、正面削り、ねじ切りなどの切削加工を行う工作機械」と定義しています。
主軸のチャック(工作物をつかむ器具)でワークを固定して削るのが基本構造です。数値制御式のものはNC旋盤と呼ばれます。
「大型旋盤」はJIS用語ではなく大型ワーク用の旋盤の総称
「大型旋盤」という呼び方は、JIS B 0105:2012に見出し語として存在しません。
JISが規定するのは旋盤・普通旋盤・立て旋盤・正面旋盤・ロール旋盤・車輪旋盤といった個々の用語で、それらに「大型」を付けた公式区分はないのです。
つまり大型旋盤とは、大型・大重量のワークを加工する旋盤を指す業界の慣用的な総称であり、実機は普通旋盤や立て旋盤、大型CNC旋盤などに当てはまります。
出典:JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語
旋盤はどこからが「大型」と呼ばれるか
旋盤はどこからが「大型」と呼ばれるのか、気になるところです。実はこの境界を定めた公的な基準は存在しません。まずは、大型かどうかの判断に使われるスペックの意味から見ていきましょう。
大型かどうかを測る主なスペック軸(振り・両センタ間距離・主軸貫通穴径など)
旋盤の加工能力は、いくつかの寸法で表されます。
代表的なのが、ベッド上の振り(回せるワークの最大直径)、両センタ間距離(主軸台と心押台の間で加工できる最大長さ)、主軸貫通穴径(パイプ材を通せる主軸内部の穴径)です。
立旋盤ではテーブル直径や最大積載質量も重要な指標で、これらの数値が大きいほど大型のワークに対応できます。
明確な数値基準は存在しない|業界慣用の目安
「振りがφ◯◯mm以上」といった数値境界を定めた公的規格はありません。
JIS B 0105:2012に大型旋盤の区分はなく、精度検査を定めたJIS B 6202:1998も振りやセンタ間距離で機械を区分しますが、これは精度の許容差を決める区分であって、大型旋盤の呼称ではないのです。
一般に大径・大重量のワークを扱う旋盤を大型旋盤と呼ぶものの、明確な公的基準はないのが実情です。
出典:
大型旋盤の種類|横型・立旋盤・正面旋盤・車輪旋盤・ロール旋盤・大型CNC旋盤
大型旋盤には、主軸の向きや構造によっていくつかの種類があります。ここでは横型・立旋盤・車輪旋盤・ロール旋盤、そしてNC制御で複合加工まで行える大型CNC旋盤・大型ターニングセンタを紹介します。
NC旋盤とマシニングセンタとの違いは「ターニングセンタとは?NC旋盤・マシニングセンタとの違いやメリット・デメリットを解説」で詳しく解説しています。
なお、立旋盤・タレット旋盤という呼び方は業界で広く使われる通称です。
横型(横形)大型旋盤|長尺シャフト・ロールに強い
横型(横形)大型旋盤は、主軸を水平にし、ワークをチャックと心押台(ワーク端を支える部分)のセンタ間に保持して回転させる旋盤です。
JISの普通旋盤(水平主軸・ベッド・主軸台・心押台・往復台などからなる基本的な旋盤)を大型化したものにあたります。長尺のシャフトやロール、パイプ材など軸方向に長い大物ワークの加工に強いのが特徴です。
大型機ではベッド長・両センタ間距離が数m〜10m級に及びます。
立旋盤(立て旋盤)|大径・大重量の丸物に強い
立旋盤(立て旋盤)は、垂直な主軸の上の水平な回転テーブル(面盤)にワークを載せて回転させる旋盤です。
JISは「垂直面内にある主軸に取り付けたテーブル上に工作物を取り付け、刃物台をコラム又はクロスレールに沿って送り切削する旋盤」と定義しています。
ワークの自重で安定固定でき、フランジ・リングなど大径・大重量で短胴の丸物に強いのが特徴です。
車輪旋盤・ロール旋盤など専用大型旋盤
車輪旋盤は、鉄道車両の車輪を車軸に取り付けたまま外周を切削する専用の旋盤です。近縁の車軸旋盤は、車軸そのものを切削する旋盤で、いずれも鉄道車両向けの大型旋盤にあたります。
ロール旋盤は、製鉄や製紙で使われる円筒ロール・溝ロールなどを切削する旋盤で、大径・大重量のロールを扱う代表的な大型旋盤です。
これらは特定の産業・部品に特化した専用機であり、汎用の横型・立型旋盤とは異なる設計になっています。
大型CNC旋盤・大型ターニングセンタ|NC制御で複合加工へ
横型・立型の大型旋盤にNC(数値制御)やATC(自動工具交換装置)、回転工具を搭載し、旋削・穴あけ・ミーリングを1台でこなせるようにしたものが大型CNC旋盤・大型ターニングセンタです。
JISでは旋盤(用語02000)とターニングセンタ(用語07100)は別の用語として区分されています。
大型旋盤のすべてがターニングセンタというわけではなく、NC・ATC・回転工具を備えたものが該当します。
出典:JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語
大型旋盤が得意とする加工・用途
大型旋盤が活躍する現場は、造船・発電・建機・製鉄プラントなど多岐にわたります。ここでは大型旋盤が得意とする代表的なワークを見ていきます。
旋盤加工そのものの基礎は「旋盤加工とは?加工の種類・手順・メリットをわかりやすく解説」で解説しています。
大型旋盤で加工する代表的なワーク(長尺シャフト・ロール・フランジ・車輪・大径パイプなど)
大型旋盤が加工するのは、大径・大重量の回転対称部品が中心です。
横型は発電機や船舶の推進軸のような長尺シャフトに強く、立型は大径ベアリングや大物フランジなど大径・短胴の丸物に強いという使い分けがあります。
オークマは立形複合加工機を「大径ベアリングや大物フランジ形状部品の加工に威力を発揮」と案内しています。このほか圧延ロール、圧力容器、大径パイプ、鉄道車輪、風力発電部品なども加工対象です。
出典:
大型旋盤の主要メーカーと代表機種
大型旋盤は複数の国内メーカーが手がけており、機種によって得意な形状やスペックが異なります。
ここではオークマ・芝浦機械・オーエム製作所・ニデックの代表的な機種を紹介します(数値は2026年7月時点のものです。最新情報は各社公式サイトでご確認ください)。
旋盤の制御方式については「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いや種類・メリット・選び方をわかりやすく解説」「汎用旋盤とは?構造・使い方・NC旋盤との違いをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
オークマ・芝浦機械・オーエム製作所|立旋盤系の主要メーカー
立旋盤系の主要メーカーには、オークマ・芝浦機械・オーエム製作所があります。
オークマの立形複合加工機VTM-2000YBは、最大テーブル・加工径φ2,000mm・最大加工長1,400mmの5軸制御機です。
芝浦機械はTUE・TSS-C・TUD・TMD・TDSの各シリーズを展開しており、代表スペックは下表のとおりです。オーエム製作所は立旋盤・車輪旋盤を主力とし、テーブル径はφ915〜3,000mm。
|
シリーズ/型 |
テーブル直径(mm) |
最大振り(mm) |
最大積載質量(kg) |
|---|---|---|---|
|
TUE 100(S) |
1,016 |
1,200 |
2,000 |
|
TUE 150(S) |
1,450 |
2,000 |
8,000 |
|
TSS-C 20/40C |
2,000 |
4,000 |
20,000 |
|
TDS 40/50S |
4,000 |
5,000 |
30,000 |
出典:芝浦機械 立旋盤・ターニングセンタ標準仕様(2026年7月時点)
ニデック(TG-Series)・池貝・マザック・DMG森精機|横型・総合メーカー
横型・総合メーカーには、ニデック・池貝・マザック・DMG森精機があります。
ニデックの大型CNC旋盤「TG-6000」は製造を株式会社TAKISAWAが担い、主軸貫通穴径φ375mm・最大加工長4031mm・最大加工径φ760mmに対応する横型機です。
池貝・マザック・DMG森精機も横型CNC旋盤や複合加工機の各シリーズを展開しており、個別の大型機スペックは各社公式でご確認ください。
出典:
中古の大型旋盤を導入する際のポイント|価格相場・搬入据付・安全対策
中古の大型旋盤を導入する際は、価格の決まり方や搬入・据付の段取り、安全面の配慮まで押さえておく必要があります。ここでは検討時に確認しておきたいポイントを順に見ていきましょう。
中古大型旋盤の価格を左右する要因
中古の大型旋盤は個体差が大きく、公的な相場統計はありません。
価格を左右するのは、機種(横型か立型か)、テーブル径や振り、両センタ間距離、主軸出力、NC世代、ATC・C軸・Y軸などの複合機能の有無、メーカー、年式、オーバーホール歴と多岐にわたります。
同じシリーズでもオプション構成で価格差が出るため、実際の出品例と照らし合わせ、必要な加工能力に見合う1台かを見極めましょう。
搬入・据付で確認すべきポイント
大型旋盤は本体質量が数トン〜数十トン級に及ぶため、搬入・据付には一般的な設備導入と異なる配慮が要ります。
搬入経路や床の耐荷重(補強・基礎工事の要否)、天井クレーンなど重量物運搬の手配、電源容量、据付時の水平出し(レベリング)と基礎ボルト固定、据付後の芯出し・試運転を、機種・設置環境ごとに確認しておきましょう。
費用や床耐荷重は現場ごとに異なるため、専門業者や販売元へ早めに相談を。
大型旋盤を安全に扱うための注意点
大型旋盤は重量物・回転体特有のリスクを伴うため、安全対策が最優先です。
吊り上げ作業中の落下、回転部への巻き込まれ、大型ワークと機械のすき間での挟まれといった事故につながりやすく、搬入・据付・試運転のいずれの場面でも注意が要ります。
作業手順の確認や保護具の着用に加え、据付・搬入は専門業者に相談し、日常点検やオーバーホールの記録も残しておきましょう。
コラム:戦艦大和の主砲を削った巨大旋盤「15299機」
大型旋盤の歴史を語るうえで欠かせないのが、戦艦大和の主砲身を削り出したという巨大旋盤「15299機」です。
15299機とはどのような機械か
きしろ商事によると、巨大旋盤「15299機」は1938年にドイツ・ドルトムント市のワグナー社から輸入され、呉海軍工廠の砲熕部砲身工場に設置されました。
戦艦大和の主砲身(口径46cm・長さ20.7m・重さ166トン)の加工に使われた機械で、本体は幅5m・高さ5m・重さ約219トン、面盤の直径は約3.2m、全長は約40mに及ぶと紹介されています。
購入代金は約45万円だったといいます。
呉海軍工廠から大和ミュージアムへ
きしろ商事の記載によると、15299機は1953年に神戸製鋼所高砂工場へ払い下げられ、大型タンカー用クランクシャフトの加工に使われました。
1996年からはきしろ播磨工場で大型船舶用プロペラ軸の加工機として稼働し、2013年に遊休化しています。
大和ミュージアム公式によると、公開日は2023年3月5日で、ふるさと納税型クラウドファンディングにより69年ぶりに呉の地へ戻ったと紹介されています。
出典:
シェアリングファクトリーのサービス紹介
シェアリングファクトリーは、中古工作機械の売買・仲介を専門に手がけています。
大型旋盤をはじめとする横型・立型旋盤や複合加工機の出品情報を随時掲載しており、機種・スペック・状態を確認しながら比較検討できるのが特長です。
導入だけでなく、設備の入れ替えや事業整理に伴う売却のご相談にも対応しています。工作機械の売買でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。
大型旋盤についてよくある質問
Q1. 大型旋盤とはどのような機械ですか?
A. 大型旋盤は、大型・大重量のワークを加工する旋盤の総称です。
JIS B 0105:2012という工作機械の名称を定めた規格には「大型旋盤」という区分自体は存在せず、実際の機種は普通旋盤・立て旋盤・正面旋盤・ロール旋盤・車輪旋盤といったJIS用語や、大型CNC旋盤・大型ターニングセンタといったメーカーの製品分類に当てはまります。
Q2. 旋盤はどこからが「大型」と呼ばれますか?
A. 振りやセンタ間距離の数値で「ここから大型」と定めた公的な基準はありません。一般的には、大径・大重量のワークを扱う旋盤を大型旋盤と呼ぶのが実情です。
加工業者の設備紹介では、振り(ベッド上)φ1,000mm超・両センタ間距離数m以上のクラスを大型として扱う例が見られます。
Q3. 大型旋盤にはどのような種類がありますか?
A. 主軸が水平な横型(横形)大型旋盤、垂直な主軸の上でワークを回す立旋盤(立て旋盤)のほか、鉄道車両向けの車輪旋盤・車軸旋盤、圧延ロールなどを加工するロール旋盤が代表的です。
さらにNC制御で複合加工まで行える大型CNC旋盤・大型ターニングセンタも普及しています。
Q4. 大型旋盤の主要メーカーはどこですか?
A. 立旋盤系ではオークマ・芝浦機械・オーエム製作所、横型・総合メーカーではニデック(TG-Series。製造:株式会社TAKISAWA)・池貝・マザック・DMG森精機などが代表的です。
各社ともテーブル径や最大加工径・加工長の異なる複数シリーズを展開しており、用途に合わせて選べます。
Q5. 大型旋盤を安全に扱う際は、どのような点に注意すればよいですか?
A. 大型旋盤は重量物・回転体特有のリスクがあり、吊り上げ作業中の落下や回転部への巻き込まれ、ワークと機械のすき間での挟まれに気を配らなければなりません。
搬入・据付は専門業者に相談し、作業手順の確認や保護具の着用、日常点検を徹底しましょう。
まとめ:自社に合った大型旋盤を見極めて導入を成功させよう
大型旋盤は、JISに定義のない大型ワーク用の旋盤の総称であり、境界を決める公的基準もありません。
横型・立旋盤・車輪旋盤・ロール旋盤・大型CNC旋盤といった種類の違いと、自社が加工したいワークの形状・大きさを照らし合わせることが、機種選定の一番の近道です。
中古導入では価格変動要因や搬入据付の段取りも踏まえて検討しましょう。工作機械の売買・レンタルをご検討の方は、お気軽にご相談ください。
