旋盤のテーパー加工で、図面通りの角度に削れず悩んでいませんか。
テーパー加工とは、旋盤で丸棒の外周を円錐状に仕上げる技術で、シャフトの嵌合部や工具のテーパーシャンクなど幅広い場面で使われる基本技術です。本記事では円すい・テーパー比・テーパー角度の定義、複式刃物台法をはじめとする4つの加工方法、角度計算式、JIS規格のモールステーパまで解説します。
読み終える頃には、図面の指示に合わせた加工方法を選べるようになります。
テーパー加工とは?円すい・テーパー比・テーパー角度の定義
テーパー加工は旋盤加工全体のなかの一手法です。旋盤加工の基本を先に押さえたい方は「旋盤加工とは?加工の種類・手順・メリットをわかりやすく解説」も参考にしてください。
円すい・テーパー比・テーパー角度のJISでの定義
JIS B 0154:1996「円すい用語」が円すい・テーパーの用語を定めています。正式表記は長音なしの「テーパ」「円すい」で、一般解説では「テーパー」「円錐」を使います。
円すいは円すい面又は円すい部品(項目101)、テーパ比は二つの軸直角断面の直径差とその間隔との比(項目213)、テーパ角度は一つの軸断面における二つの母線間の角度(項目210・全角)です。
テーパーと勾配(こう配)の違い
テーパーは中心軸に対して両側が対称に開く円錐状の形状で、勾配(こう配)は片側だけが基準線に対して傾く形状です。旋盤で棒材の外周を円錐状に削るのがテーパー加工にあたります。
シャフトの嵌合部や工具・金型のテーパーシャンク、自動車部品の軸受まわりなど、部品同士の固定・センタリングによく使われる形状です。
出典:JIS B 0154:1996「円すい用語」(kikakurui.com)
テーパー比・テーパー角度の計算方法と図面の読み方
ここでは、テーパー比とテーパー角度を実際に計算する方法を解説します。記号の定義はD=大径、d=小径、L=テーパー部の長さです。
テーパー比の計算式(T=(D−d)/L)
テーパー比Tは、大径D・小径d・テーパー部の長さLを使い、T=(D−d)/Lで求められます。
テーパー比1/5は、長さ5mm進むごとに直径が1mm変化するという意味です。図面にテーパー比が指示されている場合は、この式で各寸法の関係を確認できます。
テーパー角度(半角・全角)の計算式
テーパー半角θの式は、tanθ=(D−d)/(2L)、θ=arctan{(D−d)/(2L)}です。JIS B 0154が定めるテーパー角度(全角)は、この半角の2倍(2θ)にあたります。
複式刃物台の目盛りに設定するのは全角ではなく半角である点に注意しましょう(詳しくは加工方法の章で解説します)。
図面でのテーパー指示の読み方
図面ではテーパー比(例「1/5」「1:20」)または角度(度分秒)でテーパーの指示がされるのが一般的です。どちらの形式で指示されていても、本記事の計算式を使えば大径・小径・長さの関係を求められます。
旋盤でのテーパー加工4つの方法と選び方
これらの加工方法は、主軸の回転を利用しながら手動操作を基本とする汎用旋盤で行われます。汎用旋盤の構造や操作の基本を確認したい方は「汎用旋盤とは?構造・使い方・NC旋盤との違いをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
①複式刃物台法(コンパウンドスライド旋回法)
複式刃物台(コンパウンドスライド。刃物台の上に載り角度旋回できる補助スライド)をテーパー半角θだけ旋回させ、その方向へ手送りで削る方法です。
短く急なテーパーに向き、送り長は刃物台のストロークに制限されるため長いテーパーには向きません。目盛りに設定するのは角度そのものではなく半分の半角である点が、初心者がつまずきやすいポイントです。
②心押台オフセット法(テールストック横ずらし法)
心押台(テールストック。主軸と反対側でワークの端を支える台)を主軸中心線から横にオフセットし、ワークを傾けて通常の縦送りで削る方法です。
長く緩やかなテーパー向きで、急なテーパーには適しません。心押台をオフセットすると、センター穴の軸も傾くため、両センターで支持する精度や当たり具合、加工時の振動のしやすさに影響が出る点がトレードオフです。
③テーパーターニングアタッチメント法
テーパーターニングアタッチメント法は、専用アタッチメント(倣い装置)で往復台を一定角度に案内しながら倣い加工する方法です。心押台をずらす手間がなく、長いテーパーにも対応できます。
④総形バイト法(フォームツール法)
総形バイト法(フォームツール法)は、テーパー形状に成形したバイトを送り込んで一発で削る方法です。短いテーパー専用で、接触面積が大きく切削抵抗が増すため長いテーパーには不向きです。
外径テーパーと内径テーパーの違い
内径テーパー(穴の内側を円錐状に加工するテーパー)は、工具の突き出し長さが長くなりやすく、たわみや振動が出やすいという難しさがあります。外径テーパーに比べて仕上げの精度を保ちにくい点を押さえておきましょう。
出典:Mechical「Taper Turning Methods in Lathe Machine」
NC旋盤・CNC旋盤でのテーパー加工の考え方
近年は手動操作を必要としないNC旋盤・CNC旋盤でのテーパー加工も広く行われています。NC旋盤と汎用旋盤の違いを詳しく知りたい方は「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いや種類・メリット・選び方をわかりやすく解説」をご覧ください。
NCプログラムでのテーパー加工の考え方
NC旋盤では、プログラムで大径・小径・長さ(またはテーパー角)を指定し、直線補間(G01)で工具の軌跡を生成します。
刃物台の角度旋回や心押台のオフセットといった機械的な段取りが不要で、任意の角度や複雑な形状、連続的なテーパーにも対応できます。角度や寸法をプログラムに入力すれば、直線補間で削れるという考え方です。
規格テーパー(モールステーパ・メートルテーパ)の種類
旋盤のテーパー加工では、JIS規格で寸法が定められた「モールステーパ」「メートルテーパ」もよく使われます。ここでは番号ごとの数値を確認していきましょう。
モールステーパ(MT0〜MT6)のテーパー比と大径
モールステーパの規格値は、テーパー比がJIS B 3301:2008、大径DがJIS B 4003:1999で定められた公式値です。
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番号 |
テーパー比(JIS B 3301:2008) |
大径D mm(JIS B 4003:1999)
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|---|---|---|
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MT0 |
1:19.212 |
9.045 |
|
MT1 |
1:20.047 |
12.065 |
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MT2 |
1:20.020 |
17.780 |
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MT3 |
1:19.922 |
23.825 |
|
MT4 |
1:19.254 |
31.267 |
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MT5 |
1:19.002 |
44.399 |
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MT6 |
1:19.180 |
63.348 |
モールステーパは一般に「約1/20」と呼ばれますが、実際の比率はMT5の1:19.002からMT1の1:20.047まで番号ごとにわずかに異なり、正確に1/20という規格ではありません。主軸センターやドリルチャックの取付部など、規格化された箇所で使われています。
メートルテーパ(メトリックテーパ)
メートルテーパ(メトリックテーパ)は、モールステーパのような番号ごとの微差がなく、全番号一律でテーパー比1:20です。規格化されたテーパーシャンクの取付部などで、モールステーパと並んで使われる方式です。
出典:JIS B 3301:2008「テーパゲージ―モールステーパ及びメトリックテーパ」(kikakurui.com)
出典:JIS B 4003:1999「工具用テーパシャンク部及びソケット」(kikakurui.com)
テーパー加工の注意点と仕上げの確認方法
規格化されたテーパーの一種に、配管の接続部で気密性を確保するための管用テーパーねじがあります。
ねじ加工そのものについて詳しく知りたい方は「ねじ切り旋盤とは?仕組み・種類・加工手順と旋盤選びのポイントを解説」も参考になります。
芯出し・工具刃先高さの精度がテーパー面の仕上がりを左右する
テーパー面の仕上がりを左右するのは、芯出しや工具刃先の高さ合わせの精度です。
段取りの段階でこの高さ合わせがわずかにずれるだけで、削り出したテーパー面がゆるやかに曲面化してしまう現場もあります。段取り時は、高さ合わせを丁寧に行いましょう。
削って確認して再調整する実務フロー
旋盤でのテーパー加工では、削っては止めて確認し、必要に応じて再調整するという反復作業がよく行われます。
当たりの確認には、テーパーゲージや光明丹(あたり確認用の赤色塗料)を使う方法が一般的です。数値化された公差の基準は現場や図面によって異なるため、都度確認しながら仕上げていきましょう。
シェアリングファクトリーのご紹介
シェアリングファクトリーは、旋盤・NC旋盤・マシニングセンタなど、テーパー加工に対応した工作機械を含む中古工作機械の売買・レンタルを手がけています。
設備の導入・入れ替えをご検討の際は、機種選定から搬入までまとめてご相談いただけます。
工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。
旋盤のテーパー加工についてよくある質問
Q1. 旋盤のテーパー加工とは何ですか?
旋盤のテーパー加工とは、丸棒の外周を円錐状に削る加工です。JIS B 0154:1996では、円すいの二つの軸直角断面の直径差とその間隔との比を「テーパ比」、一つの軸断面における二つの母線間の角度を「テーパ角度」と定義しています。
テーパーは中心軸に対して両側が対称に開く形状で、片側だけが傾く勾配とは区別される形状です。
Q2. 旋盤でテーパー加工をする手順は?
旋盤でのテーパー加工には、複式刃物台法・心押台オフセット法・テーパーターニングアタッチメント法・総形バイト法の4つの方法があります。
短く急なテーパーは複式刃物台法、長く緩やかなテーパーは心押台オフセット法が向いており、NC旋盤・CNC旋盤ではプログラムに角度や寸法を入力し、直線補間で削る流れです。
Q3. テーパー角度の計算方法は?
テーパー角度の計算には、まずテーパー半角θをtanθ=(D−d)/(2L)で求めます。テーパー角度(全角)は、この半角の2倍(2θ)にあたります。複式刃物台の目盛りには、全角ではなく半角を設定する点に注意しましょう。
Q4. テーパー比1:5は何度になりますか?
テーパー比T=1/5の場合、tanθ=T/2=0.1となり、θ=arctan(0.1)≈5.71°です。これは複式刃物台に設定する半角にあたります。JIS定義のテーパー角度(全角)はこの半角の2倍にあたるため、2θ≈11.42°(約11.4°)です。
Q5. 旋盤でテーパー加工をする際の注意点は?
テーパー面の仕上がりは、芯出しや工具刃先の高さ合わせの精度に左右されます。
削っては当たりを確認し、必要に応じて再調整するという手順を繰り返すのが実務では一般的です。テーパーゲージや光明丹(あたり確認用の赤色塗料)を使い、都度仕上がりを確認しましょう。
まとめ:4つの加工方法を使い分けてテーパー加工を成功させよう
旋盤のテーパー加工は、円すい・テーパー比・テーパー角度の定義を正しく理解することが、図面通りの仕上がりへの近道です。
複式刃物台法・心押台オフセット法・アタッチメント法・総形バイト法の4つを、テーパーの長さや角度に応じて使い分け、JIS規格のモールステーパやメートルテーパも押さえておけば、加工方法の判断に迷いません。
工作機械の売買・レンタルをご検討の方は、お気軽にご相談ください。
