使わなくなった溶接機の買取を頼む前に、何を書き出し、どの定めを押さえるかが悩みどころです。アーク溶接電源の仕様は、JIS C 9300-1のタイプJの銘板項目が書き出しの手がかりです。
交流アーク溶接機の自動電撃防止装置は、譲渡等の制限・検定・使用の条文ごとに義務の主体が異なります。ボンベの容器は外面に所有者を明示する定めがあります(一部の容器を除く)。
銘板項目から入力表示まで解説します。
アーク溶接機を売る前に、JISのタイプJの銘板に表示される項目(定格溶接電流・定格使用率・定格入力電圧・定格周波数など)を書き出す
売却先の違いや見積もり前の確認項目、古物商許可、会計・税務、補助金、廃棄の扱いは「中古機械の買取と直接売買の違い|売却先の選び方と注意点を解説」で、買取業者の比べ軸の考え方は「工作機械の買取ランキングを見る前に決める比較軸と記事の読み方を解説」の記事が詳しいです。
アーク溶接電源の仕様は、規格JIS C 9300-1のタイプJの銘板(表14A)に沿って書き出します。表示項目は、JISが「我が国独自の区分」として加えたタイプJの定めです。
すべての電源がタイプJとは限りません。定格入力電圧と定格周波数は、表14Aでエンジン駆動式のものは不要と書かれています。
JIS C 9300-1は、工業用及び専門家用に設計された、1 000 Vを超えない電圧が印加されるものなどの、アーク溶接及び類似のプロセスの電源の規格です。
JIS C 9300-6に基づき設計され、主として素人が使用する用途の限定使用率アーク溶接電源と切断電源には、適用しません。
表14Aの項目のうち、まず書き出すのは、定格溶接電流(A)、定格使用率(%)、定格入力電圧(V)及び相数、定格周波数(Hz)です。
表14Aの項目は、ほかに最高無負荷電圧(V)、質量(kg)、製造番号、製造年などです。定格溶接電流には、交流又は直流の区分も示します。
定格使用率は表示項目名で、別の語である使用率をJIS C 9300-1は「全時間に対する負荷時間の比率」と定義しています。JIS C 9300-1では、全時間の周期は10分です。
定格入力電圧と定格周波数は、表14Aの項目名どおりに書き出します。
電源を外す作業に資格が要るかは、「コンプレッサーの買取前に確認する空気タンク・届出・撤去の注意点を解説」の電気工事士法の資格区分の章で解説しています。
規格が定義する語の例は、定格出力(装置の出力の定格値)と、定格最大溶接電流(最大設定にしたときの溶接電源から標準溶接条件で得ることができる標準溶接電流の最大値)です。
銘板は写真に撮り、記載を事前に書き出しておくと、中古機の査定を依頼するときに仕様を伝えやすくなります。
出典:日本規格協会 JSA Webdesk「JIS C 9300-1:2020 アーク溶接装置―第1部:アーク溶接電源」(規格名称・状態・規格概要・履歴)
交流アーク溶接機の自動電撃防止装置は、譲渡等の制限・検定・使用の条文ごとに義務の主体が異なる
交流アーク溶接機用の自動電撃防止装置には、譲渡・貸与・設置の制限、検定を受ける義務、使用の義務の3つの定めがあり、条文ごとに対象が違います。
条文は2026年10月時点の現行版です。
交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は、安衛法の別表第二に掲げられ、法第42条が譲渡・貸与・設置を制限している
別表第二(第42条関係)は第十二号に交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を掲げ、法第42条は、別表第二に掲げるものなどのうち政令で定めるものを、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ譲渡し、貸与し、又は設置してはならないと定めます。
規格は昭和47年労働省告示第143号の構造規格で、条文に新品と中古品の区別の記載はなく、中古品の売却への当てはまりも条文だけでは判断できないところです。
型式検定を受ける義務を負うのは、製造し、または輸入した者(外国製造者の検定が行われた輸入品を除く)。合格表示のないものは使用してはならない
施行令第14条の2第9号が掲げる型式検定の対象(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く)について、法第44条の2第1項は、製造し、又は輸入した者に検定を受けなければならないと定めます。
ただし書により、外国製造者の検定が行われた輸入品は対象外です。
第7項の定めは、第1項本文の機械等で第5項の表示が付されていないものを使用してはならない、というものです。
使用する側の事業者は、安衛則第332条が定める場所で装置を使い、第352条で使用前に作動状態を点検する
安衛則第332条は、導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ、または墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが2メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところで、交流アーク溶接等(自動溶接を除く)を行う事業者に、装置の使用を義務づけます。
第352条は、その日の使用前の作動状態の点検を事業者に求めます。異常時は、直ちに補修し、または取り換える定めです。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第42条(譲渡等の制限等)・別表第二 第十二号、第44条の2第1項・第5項・第7項(型式検定)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第14条の2第9号(型式検定の対象)
出典:厚生労働省 法令等データベース「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格」(昭和47年労働省告示第143号)制定文
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第332条(交流アーク溶接機用自動電撃防止装置)・第352条(電気機械器具等の使用前点検等)の表
付属品は本体と別の機器として書き出し、ガスボンベの容器は外面に所有者を明示する定めがある
本体の仕様を書き出したら、トーチ・ワイヤ送給装置・溶接棒ホルダと、ガスボンベの外面の表示の定めを整理します。
トーチ・ワイヤ送給装置・溶接棒ホルダは、JIS C 9300 で本体と別の部に分かれている
JIS C 9300 シリーズには、第5部のワイヤ送給装置、第7部のトーチ、第11部の溶接棒ホルダがあり、第1部のアーク溶接電源とは別の部です。
本体に付属する機器も、機器ごとにメーカー名と型番を添えて、本体と別の行で書き出します。
ガスボンベの容器は、外面に所有者を明示する定めがある(一部の容器を除く)
容器保安規則第10条第1項第3号は、容器の外面に所有者(管理業務を委託している場合は所有者または管理業務受託者)の氏名または名称、住所、電話番号を明示すると定めます(一部の容器を除く)。
LPガス以外のガスの容器では、高圧ガス保安協会(KHK)が放置容器を見つけた人向けに、所有者刻印と登録記号番号簿の照合を案内しています。
出典:日本産業標準調査会(JISC)JIS検索「JISリスト(C9300)」(JIS C 9300-5・-7・-11 の規格名称)
出典:e-Gov法令検索「容器保安規則」第10条第1項第3号(容器の外面の所有者の表示)・ただし書
出典:e-Gov法令検索「高圧ガス保安法」第46条第1項(表示)
出典:高圧ガス保安協会(KHK)「放置された高圧ガス容器(ボンベ)を見つけたときは」(ボンベの所有者の確認方法 ①②)
出典:高圧ガス保安協会(KHK)「容器所有者登録」(制度の概要)
エンジン駆動式の電源は銘板の入力表示が変わり、国土交通省の指定一覧には「電気溶接機」の欄がある
タイプJの銘板の表示項目は、エンジン駆動式のものでは一部が異なります。
JIS C 9300-1 のタイプJの銘板(表14A)では、エンジン駆動式のものは定格入力電圧と定格周波数の表示が不要とされている
表14Aは、定格入力電圧(V)及び相数と定格周波数(Hz)の注記欄に、「エンジン駆動式のものは不要」と書いています。
エンジン駆動式の電源は、表14Aに加えて、表14Bの定格回転速度や燃料タンクの容量なども追加で表示する対象です。
定格入力(kVA及びkW)の項目に、不要の注記は付いていません。
国土交通省の排出ガス対策型建設機械の指定一覧には「電気溶接機」がある
国土交通省の3次指定型式一覧(電気溶接機)では、分類欄が「ディーゼルエンジン付」または「ディーゼルエンジン駆動」です(令和8年9月現在)。
同省は、この指定を、直轄工事で指定機械の使用を進めてきた制度と説明しています。
出典:日本産業標準調査会(JISC)「JIS C 9300-1:2020 アーク溶接装置-第1部:アーク溶接電源」(15.2 表示、表14A・表14B のタイプJの表示内容)
出典:国土交通省「排出ガス対策型建設機械指定状況」(令和8年9月現在・一般工事用の「電気溶接機」の行、3次指定型式一覧)
出典:国土交通省「排出ガス対策」(ページ冒頭:指定制度の説明)
遊休設備を、企業間で直接売買できるシェアリングファクトリー
シェアリングファクトリーは、工作機械など遊休資産の企業間直接売買サービスです
(2026年10月時点)。
全ての廃棄物と、補助金などで目的外の利用制限があるものは、利用規約で出品が禁止されています。禁止物にはほかにも、「法令に違反する商品」「商品の販売の際に、法律上の許認可が必要な商品」などがあります。
中古機械の売買でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。
出典:シェアリングファクトリー「はじめてガイド」(遊休資産売買とは)
出典:シェアリングファクトリー株式会社「利用規約」第8条(商品の出品)第2項(1)・(6)・(12)・(19)
溶接機についてよくある質問
Q1. アーク溶接とガス溶接の業務に就くとき、教育や資格の区分は同じですか?
使う側の事業者の義務として、アーク溶接等は安衛則第36条第3号の特別教育、ガス溶接等は法第61条第1項に基づく施行令第20条第10号の就業制限と、別の定めです。
特別教育は、アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務に労働者をつかせるとき、事業者が行います。
就業制限は、可燃性ガス及び酸素を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の業務が対象で、つけるのはガス溶接作業主任者免許を受けた者などです。
Q2. 溶接ヒュームについて、事業者にはどのような措置が定められていますか?
使う側の事業者の義務として、溶接ヒュームは第2類物質で、特定化学物質障害予防規則が換気や呼吸用保護具の使用などを定めています。
金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場の換気は、全体換気装置による換気の実施またはこれと同等以上の措置です(第38条の21第1項)。
作業に労働者を従事させるときは、有効な呼吸用保護具を使用させます(第5項)。
濃度測定などは、作業を継続して行う屋内作業場の定めです。
Q3. 溶接棒のホルダーにも、使用前の点検の定めはありますか?
使う側の事業者の義務として、溶接棒等のホルダーにも絶縁効力と耐熱性の要件と、使用前の点検の定めがあります。
安衛則第331条は、アーク溶接等(自動溶接を除く)の作業に使うホルダーを、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ使用してはならないと定めます。
第352条が事業者に求めるのは、その日の使用前の、絶縁防護部分とホルダー用ケーブルの接続部の損傷の有無の点検です。
Q4. ガス溶接で使うアセチレン発生器や安全器は、法第42条の政令に挙がっていますか?
挙がっています。
施行令第13条第3項は、法第42条の政令で定める機械等として、アセチレン溶接装置のアセチレン発生器(第1号)と、アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置の安全器(第4号)を掲げます(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く)。
Q5. 高圧ガスの容器には、再検査を受ける期間が定められていますか?
定められています。
容器保安規則第24条は、容器再検査の期間を、容器の種類ごと、種類によっては製造後の経過年数ごとに定めています。
高圧ガス保安法第48条第1項第5号は、高圧ガスを容器(再充てん禁止容器を除く)に充てんする場合の条件で、期間を経過した容器などに、容器再検査の合格と刻印等を求める内容です。
同規則第24条第4項は、経済産業大臣の認可や災害等のやむを得ない事由による期間の変更を定めています。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第59条第3項(特別教育)・第61条第1項(就業制限)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第36条第3号(特別教育を必要とする業務)、第41条・別表第三(就業制限の資格)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第20条第10号(就業制限の業務)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」別表第三 第二号 34の2(溶接ヒューム)
出典:e-Gov法令検索「特定化学物質障害予防規則」第27条第2項(金属アーク溶接等作業)・第38条の21第1項・第5項(屋内作業場の措置)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第331条(溶接棒等のホルダー)・第352条の表(ホルダーの点検事項)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第13条第3項第1号・第4号(法第42条の政令で定める機械等)
出典:e-Gov法令検索「高圧ガス保安法」第48条第1項第5号(容器に充てんする場合の条件)
出典:e-Gov法令検索「容器保安規則」第24条(容器再検査の期間)第1項・第4項
まとめ:アーク溶接機の買取前は、銘板の仕様を書き出し、電撃防止装置とボンベの定めを押さえておく
売る前に済ませておくのは銘板の仕様の書き出しで、電撃防止装置とボンベは条文の定めを押さえておきます。
交流アーク溶接機の自動電撃防止装置は、法第42条が譲渡・貸与・設置を制限し、検定を受ける義務が製造し、または輸入した者(外国製造者の検定が行われた輸入品を除く)に、使用の義務が安衛則第332条が定める場所で作業を行う事業者にあります。
ボンベの容器は、外面に所有者を明示する定めがあります(一部の容器を除く)。
仕様を手元にそろえたうえで、売却先に見積もりを依頼しましょう。
中古機械の売買をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
