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旋盤の事故はどんな型で起き、何から防げばよいのか。休業4日以上の事故では巻き込まれが最多で、型ごとに関係する措置が違います。

厚生労働省の労働災害統計、事故が起きやすい部位、機械を止めて行う作業の局面、手袋の事例、安全衛生規則の対応表、中古旋盤で確認する安全面を解説します。

休業4日以上では「はさまれ・巻き込まれ」が最多|旋盤事故を統計で見る

厚生労働省の労働災害統計(起因物=旋盤)によると、令和7年(2025年)の休業4日以上の死傷者は180人。型別でははさまれ・巻き込まれが115人で、最も多くなっています。

事故の型(休業4日以上)

死傷者数

はさまれ・巻き込まれ

115人

切れ・こすれ

29人

飛来・落下

21人

その他の型(激突され10人・激突3人・墜落・転落2人)

15人

合計

180人

死亡災害は別の集計で、令和7年は2人でした。内訳は激突され1人、はさまれ・巻き込まれ1人です。

休業4日以上の死傷者数は労働者死傷病報告、死亡者数は死亡災害報告をもとにした集計で、元になる報告が別です。この統計が数えるのは起因物が旋盤の災害で、旋盤作業中の災害すべてではない点に注意してください。

全国の数字も並べると、令和7年の死亡者700人のうち「はさまれ・巻き込まれ」は117人にのぼります。全業種・全起因物の合計であり、旋盤だけの数字とは別です。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害統計」令和7年(事故型別起因物別 労働災害発生状況・死亡災害発生状況、シート⑦事故型・起因物)

出典:厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」(令和8年5月27日)

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード」起因物

旋盤の事故の主な3つの型と、起きやすい部位

休業4日以上の人数が多い上位3つの型は、起きる部位がそれぞれ違います。

ほかの型には激突されなどがあります。部位の名称を図で示したのが「旋盤の各部名称を図解で解説|役割・英語名・NC旋盤との違いまで」です。

はさまれ・巻き込まれ:主軸・チャックなど回転する部分で起きる

主軸とチャック(加工物をつかむ部分)は、加工中ずっと回転しています。袖口や手袋、手がこの回転部に触れて引き込まれる事故が、はさまれ・巻き込まれです。

チャックの種類は「旋盤チャックの種類と選び方|三爪・四爪・コレット・パワーの違いを現場目線で解説」でも詳しく解説しています。

切れ・こすれ:バイトと切りくずで起きる

バイト(加工物を削る刃物)の刃先や、加工で出る切りくずに手が触れると、切れ・こすれが起きます。

飛来・落下:加工物と切りくずが飛ぶ

加工物が切断や欠損を起こして飛ぶ場合と、切りくずが飛散する場合の2つ。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード」事故の型

出典:コトバンク「旋盤」(改訂新版 世界大百科事典)

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第105条(加工物等の飛来による危険の防止)・第106条(切削屑の飛来等による危険の防止)

機械を止めて行う作業の局面|段取り・調整と、清掃・切りくず除去

安衛則には、加工中だけでなく機械を止めて行う作業についての定めもあります。運転の停止を定める条は、刃部の作業(第108条)と、刃部を除く機械部分の作業(第107条)とで分かれています。

段取り・刃物の取替え・調整のとき

刃物の取替えや調整は、バイトの刃先に手が近づく作業です。

労働安全衛生規則(安衛則、2026年10月時点)の第108条は、刃部の掃除・検査・修理・取替え・調整の作業で、機械の構造上危険のおそれがないときを除き、運転の停止を求めています。

停止したあとは、起動装置に錠をかけて表示板を付けるなど、作業者以外の運転を防ぐ措置も、同条が定める内容です。

清掃・切りくず除去のとき

刃部を除く機械部分の掃除・給油・検査・修理・調整も、危険のおそれがあるときは、第107条が運転の停止を定めています。

運転中に作業しなければならない場合で、危険な箇所に覆いを設けるなどの措置を講じたときは、停止は求められません。

運転中の刃部で切りくずを払うときは、第108条第3項により、ブラシなど適当な用具を使わせる決まり。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第107条・第108条(運転停止等)

回転中の加工物に手を近づける作業の事故|軍手の巻き込みが起きた事例の型

厚生労働省の労働災害事例には、旋盤で回転する部品に紙ヤスリやサンドペーパーを当てて研磨していた作業者が、軍手を着用したまま巻き込まれた2件が載っています。1件は死亡、もう1件は休業の事例です。

事例が原因に挙げたのは、軍手を着用したまま回転する加工物を研磨したことなどです。

対策として、高速回転中のものに手を近づけて作業させないことと、手袋の使用禁止が挙げられています。研磨の代替は、可動式の支持台にサンドペーパーを付けて加工物に押し付ける方法や、紙ヤスリでなく電動工具を使う方法。

手袋の使用禁止を定めるのは、安衛則第111条(2026年10月時点)です。条文が対象とするのは、ボール盤、面取り盤などの回転する刃物に手が巻き込まれるおそれのある場面で、旋盤は名指しされていません。

第111条が例示するボール盤の構造と使い方は、「ボール盤とは?種類・構造・使い方・選び方をわかりやすく解説」で扱っています。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害事例」No.101174(発生状況・原因・対策)

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害事例」No.101304(発生状況・原因・対策)

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第111条(手袋の使用禁止)

事故の型ごとに関係する措置|安全衛生規則の対応早見表(2026年10月時点)

2026年10月時点の安衛則で、旋盤を名指ししていない条は機械一般の規定。第110条・第113条などの条文を解説したのが「旋盤の使い方を初心者向けに解説|基本手順と安全のコツ」です。

事故の型

関係する措置の条(安衛則)

はさまれ・巻き込まれ

第101条(危険な部分の覆い・囲い)/第103条(動力しゃ断装置)/第110条(作業帽・作業服)/第113条(突出して回転する加工物の覆い・囲い等)

切れ・こすれ

第108条(刃部の運転停止、運転中の切りくず払いの用具)

飛来・落下

第105条(加工物等の飛来)・第106条(切りくずの飛来)の覆い・囲い

第101条が定めるのは「機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分」の覆い・囲いで、旋盤のチャックや主軸が該当するかは条文からは判断できません。

第103条の動力しゃ断装置は、機械ごとに設けるスイッチ、クラッチ、ベルトシフター等で、容易に操作でき、接触や振動などで不意に機械が起動するおそれのないものでなければなりません。第113条は、立旋盤・タレット旋盤等から突出して回転している加工物が危険を及ぼすおそれのあるときの覆い・囲い等の定めで、加工物等の飛来を扱う第105条とは別の条です。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第101条・第103条・第105条・第106条・第108条・第110条・第113条

現場の仕組みで防ぐ|作業手順書・教育・掲示

厚生労働省の2件の事例には、設備だけでなく運用の不備も原因に挙がっています。1件目は、作業に使う機械や作業方法、禁止事項を会社として検討せず、作業手順書のないまま作業者の判断に任せていました。

基本的な安全衛生教育や職場の巡視も行っていませんでした。

2件目も、旋盤作業の作業手順書を作成していませんでした。

対策には、2件とも作業手順書の作成と作業者への教育が挙がっています。

2件目はリスクの洗い出しと低減対策、注意事項の見やすい場所への掲示を、1件目は10人未満の事業場でも安全衛生管理の担当者を指名し、教育や職場巡視を行わせることを挙げています。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害事例」No.101174(原因・対策)・同No.101304(原因・対策)

中古の旋盤を導入するときに確認したい安全面

中古の旋盤を導入するときは、事故を防ぐ措置が現状で整っているかを見ます。確認の軸は、法令上の措置と、旋盤の安全規格の2つです。

導入全般の流れをまとめた記事が「中古旋盤の選び方・価格相場・購入先を徹底解説【失敗しない7つのポイント】」です。

中古機で覆いと動力しゃ断装置の状態を確認する

第101条は危険を及ぼすおそれのある部分の覆い・囲い等を、第103条は動力しゃ断装置を、事業者に求めています。

旋盤のチャックや主軸が第101条の対象になるかは、条文から判断できない事項です。

中古機では、危険な部分に覆い・囲いが備わっているか、動力しゃ断装置が容易に操作でき不意に起動しないものかを現状で確かめ、後付けが要るかを判断します。

JIS B 6031:2014を確認の物差しにする

旋盤の安全規格は、2014年制定のJIS B 6031:2014「工作機械―安全性―旋盤」です。

主に切削による部品加工用に設計した手動旋盤、数値制御旋盤およびターニングセンタ、自動旋盤の危険源を除去する、またはリスクを低減するための要求事項と方策を規定しており、中古機の安全面を見る物差しになります。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第101条(原動機、回転軸等による危険の防止)・第103条(動力しゃ断装置)

出典:日本規格協会 JSA Webdesk「JIS B 6031:2014 工作機械―安全性―旋盤」(規格概要・履歴)

中古の旋盤を売買するならシェアリングファクトリー

シェアリングファクトリーは、中古機械などを企業間で直接売買するサイトです。中古の旋盤を探すときや、使わなくなった旋盤を手放すときの売買の場として利用できます。

工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。

旋盤の事故についてよくある質問

Q1. NC旋盤は汎用旋盤より危ないのですか?

統計からは、NC旋盤と汎用旋盤のどちらが危ないかは比べられません。

厚生労働省の統計では「旋盤」が1行にまとめられ、NC旋盤や立旋盤の別がないためです。

JIS B 6031:2014は、手動旋盤、簡易数値制御の手動旋盤、数値制御旋盤とターニングセンタ、自動旋盤の4グループに分けて危険源を規定しています。

詳しくは「NC旋盤とは?仕組み・種類・メリットを初心者向けにわかりやすく解説」をご覧ください。

Q2. 覆いや囲いを設けられない作業では、どうすればよいですか?

覆い・囲いを設けることが作業の性質上困難で、保護具を使用させたときは、第105条・第106条の覆い・囲いは免除されます。

免除は、この2つがそろった場合に限ります(2026年10月時点)。命じられた労働者には、保護具を使う義務もあります(両条の第2項)。

いずれの条も旋盤を名指しせず、機械一般の規定です。第101条と第113条の覆い・囲いの定めには、このただし書がありません。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第105条(加工物等の飛来による危険の防止)・第106条(切削屑の飛来等による危険の防止)の各第1項ただし書・第2項、第101条・第113条

Q3. 旋盤の事故は増えているのですか?

増えているとは言い切れません。

休業4日以上の死傷者は令和6年が172人、令和7年が180人で、はさまれ・巻き込まれは2年とも115人でした。飛来・落下は8人から21人に増え、激突されは13人から10人に減っています。

2年分の比較だけでは、傾向は断定できません。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害統計」令和6年(事故型別起因物別 労働災害発生状況、シート⑦事故型・起因物)

Q4. JIS B 6031:2014は国際規格と同じ内容ですか?

JIS B 6031:2014は、ISO 23125:2010と、その追補(ISO 23125:2010/Amd 1:2012)に一致(IDT)する規格です。

2014年7月1日に発行され、2024年10月25日に確認された有効な規格です。

国際規格は2015年に第2版のISO 23125:2015が出て、2010年版と追補を置き換えました。JIS B 6031:2014は、2026年10月時点で改正されていません。

出典:日本規格協会 JSA Webdesk「JIS B 6031:2014 工作機械―安全性―旋盤」(対応国際規格・履歴)

出典:ISO 23125:2015 Machines-outils — Sécurité — Tours(試読版、Avant-propos)

Q5. JIS B 6031:2014に従わない旋盤は違法ですか?

JISは任意の国家規格です。法令の技術基準などに引用された場合は、その法令で強制力を持ちます。

2026年10月時点の労働安全衛生規則の条文に、JIS B 6031の引用はありません。覆い・囲い(第101条)や動力しゃ断装置(第103条)といった安衛則の措置は、規格とは別に事業者が講じる義務。

出典:日本産業標準調査会「JISについて」(JIS(Japanese Industrial Standards)とは)

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第101条(原動機、回転軸等による危険の防止)・第103条(動力しゃ断装置)

まとめ:旋盤の事故は、回転部に手を近づけない運用と機械側の措置を組み合わせて防ぐ

旋盤の事故は、休業4日以上ではまず巻き込まれが最多で、関係する措置は型ごとに別です。軍手や手袋は、厚生労働省の事例が対策として禁止を挙げており、運用面は作業手順書と教育で固めます。

中古の旋盤を導入するときは、覆いと動力しゃ断装置の状態に加え、JIS B 6031:2014が確認の軸です。手元の旋盤について、覆い、動力しゃ断装置、作業手順を確認してください。

工作機械の売買・導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。