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旋盤のセンタードリルは規格や種類が多く、どれを選べばよいのか迷っていませんか。本記事では、センタードリルの役割からJIS規格・A形/B形/C形/R形の種類、旋盤への取り付け・もみつけの手順、折損回避のポイントまで、実務の手順に沿って解説します。センタ穴ドリルの規格(JIS B4304)とセンタ穴の形式(JIS B1011)の対応関係を押さえれば、種類選びにも作業にも迷わなくなります。両センタ支持の基準となるセンタ穴の役割まで理解しておくことが、加工の位置精度を安定させる土台です。

※本記事内のJIS規格情報は2026年7月時点のものです。

センタードリルとは?旋盤での役割と穴あけの仕組み

センタードリルが支える旋盤の両センタ支持。主軸チャック・ワーク・心押し台・センタ穴の位置関係を図解。主軸チャック(ワークの片側を回転保持)、センタ穴(両センタ支持の基準穴)、心押し台(反対側からワークを支持)の3要素を紹介。右側に旋盤でワークをチャックと心押し台で挟んで支持している様子のクローズアップ写真を掲載

この記事では、センタードリルという工具そのものの規格・種類・使い方を掘り下げます。旋盤加工全体の種類や流れについては「旋盤加工とは?加工の種類・手順・メリットをわかりやすく解説」で解説しています。

なお、旋盤でのドリル穴あけ手順全般や芯出しの詳細とは切り口を分け、本記事はセンタードリルという工具そのものに焦点を当てます。

センタードリルの役割:もみつけと両センタ支持のためのセンタ穴あけ

センタードリルが開ける「センタ穴」は、旋盤で心押し台と主軸の両側からワークを支持する際の基準穴です。

JIS B1011は「機械加工,測定及び検査に用いるセンタ穴について規定する」と定めており、旋削から検査まで共通の基準として使われます。

もう一つの役割が、本加工用ドリルで穴をあける前に位置を決める『もみつけ』です。この一穴の精度が、後工程全体の仕上がりを左右します。

ドリル・リーディングドリルとの違い

センタードリルは「穴を貫通させる」ための工具ではなく、支持・位置決めの基準穴をつくる専用工具です。

JIS B4304も「センタ穴の加工に用いるセンタ穴ドリル」と定義しており、穴あけそのものを目的とする一般的なドリルとは役割が異なります。下穴を広げるリーディングドリルとも役割が異なり、センタードリルはあくまで支持基準づくりが目的です。

出典:JIS B1011:1987「センタ穴」(kikakurui)

出典:JIS B4304:2018「センタ穴ドリル」(kikakurui)

センタードリルの規格・種類(JIS B4304・JIS B1011)

センタードリルに関わる3つのJIS規格とセンタ穴の形式。JIS B4304(センタ穴ドリルの規格)、JIS B1011(センタ穴の形式を規定)、JIS B0041(図面での簡略図示方法)の役割の違いを図解。下部にA形・B形・C形・R形の4種類のセンタ穴断面図を60°の角度とともに掲載

ここでは、センタードリルとセンタ穴に関わる規格の対応関係と、A形・B形・C形・R形という4つの形式、材質・呼び径の選び方を整理します。

JIS B4304とJIS B1011の関係(センタ穴ドリルとセンタ穴は別の規格)

センタードリルという工具の規格と、加工後の穴の形式を規定する規格は別物です。JIS B4304は「センタ穴ドリル」という工具の規格で、本文に「センタ穴の形式は,JIS B 1011による」と明記されています。

つまり穴の形(A形・B形・C形・R形)を決めるのはJIS B1011で、図面の簡略な描き方を定めるJIS B0041とは役割が違います。3つの規格を混同しないことが、正しい選定への近道です。

規格

正式名称

役割

 

JIS B4304:2018

センタ穴ドリル

センタードリルという工具そのものの寸法・種類を規定

JIS B1011:1987

センタ穴

加工後のセンタ穴の形式(A形/B形/C形/R形)・角度を規定

JIS B0041:1999

製図−センタ穴の簡略図示方法

図面上でセンタ穴を簡略表記する方法を規定

A形・B形・C形・R形の違いとセンタ穴角(60°・75°・90°)

センタ穴ドリルは、センタ穴の形式によってA形・B形・C形・R形の4種類があり、寸法・許容差でさらに7種類に細分されるのが特徴です。

センタ穴角は60°が標準で、JIS B1011は「75度センタ穴は,なるべく用いない」と定めており、90°も規定されています。

JIS B1011が規定するのは各形式の存在と角度で、下表の形状特徴は工具技術資料に基づいて整理したものです。

形式

特徴

主な用途

 

A形

60°の円すい面(センタリング面)のみ。保護面取りはない

最も一般的。単純な支持や、後で加工除去する軸

B形

円すい面の外側に保護面取りを追加

繰り返し支持・高精度が求められる軸

C形

保護部が座ぐり形状で、センタ穴を完全に保護

特殊・大形用途

R形

円すい面を円弧面(曲面)に置き換え

センタとの当たりが安定し、研削・高精度加工向き

材質と呼び径・寸法の選び方(ハイス/超硬)

センタードリルの呼びは、①先端直径、②先端直径/シャンク径、③先端直径×センタ穴角、の3方式で表され、「1/3.15」「2/5」「1×60°」のように表記します。

材質はハイス(高速度工具鋼)製が一般的で、硬度の高い被削材や量産用途には超硬製も使われます。

超硬は刃先が摩耗しにくい一方で価格が高めなため、量産や硬い被削材には超硬、少量や一般的な材質にはハイスを第一候補にするのが実務的な判断基準です。

出典:JIS B4304:2018「センタ穴ドリル」(kikakurui)

出典:JIS B1011:1987「センタ穴」(kikakurui)

出典:JIS B0041:1999「製図−センタ穴の簡略図示方法」(kikakurui)

旋盤でのセンタードリルの正しい使い方(付け方・もみつけ手順)

センタードリルの正しい使い方4ステップ。取り付けから本加工までの一連の流れを4枚の写真で解説。1.取り付け(心押し台にセンタードリルを固定)、2.もみつけ(低速回転で少しずつ送り込む)、3.引き抜き確認(切りくずを排出し状態を確認)、4.本加工(センタ穴を基準に穴あけ)

ここでは、心押し台・ドリルチャックへの取り付け方から、もみつけの手順、外し方までの一連の流れを解説します。

心押し台・ドリルチャックへの付け方

センタードリルは、旋盤の心押し台に取り付けたドリルチャックにシャンク部を咥えて固定します。

ワークは主軸側のチャックで保持し、心押し台を前進させて先端をワーク端面に近づけ、機械を低速回転させながら軽く接触させる流れです。

取り付け段階で芯がずれていると、その後のもみつけ精度にも影響するため、心押し台のセンターとワーク中心が一致しているかを確認しておきます。

もみつけの手順とコツ

もみつけは、低速回転から始めて少しずつ送り込みます。一気に深く送り込むと切りくずが穴の中に溜まって抵抗が急に増し、先端の折損につながりやすい流れです。

途中で一度センタードリルを引き抜いて切りくずを排出し、再び少しずつ送り込む操作を挟むと、折損を避けながら安定したセンタ穴を仕上げられます。

外し方と保管時の注意点

取り外しは、主軸の回転を止めてから心押し台を後退させ、ドリルチャックを緩めてセンタードリルを引き抜きます。

先端は欠けやすいため、他の工具と一緒に無造作に置かず、専用のケースや工具箱に立てて収納するのが安全な保管方法です。使用後は刃先の摩耗や欠けを確認し、必要に応じて早めに交換すると精度を保てます。

センタードリルの切削条件・回転数の考え方

回転数・送りを左右する4つの要素。唯一の正解はなく条件で変わることを紹介。被削材(材質の硬さで変わる)、工具径(径が変われば適値も変わる)、機械剛性(機械の剛性が仕上がりを左右)、メーカー推奨値(カタログ値を基準に調整)の4項目を掲載。右側に旋盤のチャックで金属丸棒を回転させながらセンタードリルで加工している様子を掲載

回転数や送りに唯一の正解はなく、被削材・工具径・機械剛性・工具メーカーの推奨値によって変わります。具体的な回転数を求めるときの基準になるのが、カタログの推奨値や切削速度の計算式です。

回転数・送りは被削材と工具径で変わる

同じ工具径でも、軟鋼と硬鋼では削れる速さが異なるため、条件をそのまま使い回すと刃先摩耗や折損を招きかねません。工具メーカーが公表するカタログ値を基準に、実際の削れ方を見ながら回転数・送りを微調整するのが実務的な進め方です。

硬い材料を加工する際の留意点

合金鋼やダイス鋼など硬い材料をセンタードリルで加工する際は、送りをいつもより慎重に調整します。硬い被削材は刃先への負荷が大きく、無理な送り込みによる摩耗の早まりや先端欠けに要注意です。回転数をやや抑え、切りくずの排出を意識した送り方に切り替えると、折損リスクを抑えられます。

出典:Mitsuri「センタードリルの種類・角度・規格・切削条件・回転数」

センタードリルが折れる原因と防止のコツ

センタードリルが折れる送り方・折れないOKな送り方の比較。NG例:一気に深く送り込むと切りくず詰まりで折損する様子(ドリルが破損し切りくずが溜まった穴)。OK例:少しずつ送り込み途中で引き抜き切りくずを排出する3ステップ(送り込み・引き抜き・再度送り込み)

折損は突然起こるように見えても、多くの場合は日々の使い方の中に予兆があります。次の2つの観点で見直すと、原因を特定しやすくなります。

刃先摩耗・送り過多による折損とその防ぎ方

センタードリルの折損は、刃先の摩耗に気づかないまま送りを続けてしまうことが主な原因です。

摩耗が進んだ刃先は切れ味が落ち、無理に押し込む形になるため、ある瞬間に一気に折れてしまいます。加工の合間に刃先を目視で確認し、摩耗や欠けが見えたら、送り速度を落とすか早めに交換するのが有効な対策です。

切りくず詰まりを防ぐ送り方

センタ穴の中に切りくずが詰まると抵抗が急激に増え、そのまま送り続けると先端が折れやすくなります。

対策は、深く一気に送り込まず、途中で一度センタードリルを引き抜いて切りくずを排出することです。低速回転を保ちながら少しずつ送り込み、詰まりを感じたら早めに引き抜くことで折損リスクを減らせます。

ボール盤・フライス盤・マシニングセンタとの違い

旋盤と他工作機械の主軸方向の違い。ワーク回転か工具回転かで使い分けることを4種類の機械で比較。旋盤(ワークが回転)、ボール盤(工具が回転)、フライス盤(工具が回転)、マシニングセンタ(工具が回転)の写真と回転方向を示す矢印を掲載

をつくる役割は共通です。

出典:JIS B0105:2012「工作機械―名称に関する用語」(kikakurui)

シェアリングファクトリーについて

シェアリングファクトリーは、中古の旋盤・マシニングセンタをはじめとする工作機械の売買・レンタルを手がけています。

センタードリルのような工具選びだけでなく、旋盤本体の入れ替えや増設を検討する際にも、状態の良い中古機を適正価格で紹介できる体制を整えています。相談・見積もりから搬入・据付までの流れをワンストップで対応できる点も特徴です。

工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。

センタードリルについてよくある質問

Q1. センタードリルとは何ですか?

センタードリルは、旋盤で心押し台と組んで両側からワークを支持するための基準穴(センタ穴)をあける専用工具です。

JIS B4304では「センタ穴ドリル」という名称で規定されています。本加工用のドリルで穴あけする前に位置を決める『もみつけ』にも使われ、後工程全体の仕上がりを左右する重要な一穴です。

Q2. センタードリルにはどんな種類がありますか?

センタ穴の形式によって、A形・B形・C形・R形の4種類があり、寸法・許容差でさらに7種類に細分されます。

センタ穴角は60°が標準で、JIS B1011では90°も規定される一方、75°は「なるべく用いない」との扱いです。用途に応じて形式と角度を選びます。

Q3. センタードリルの回転数・切削条件の目安は?

回転数や送りには一律の正解がなく、被削材の硬さや工具径、機械の剛性によって適切な値が変わります。

まずは工具メーカーが公表するカタログ値を基準にし、削れ方を見ながら微調整するのが実務的な進め方です。

Q4. センタードリルとリーディングドリル・普通のドリルとの違いは何ですか?

センタードリルは穴を貫通させる工具ではなく、支持・位置決めの基準穴をつくる専用工具です。

普通のドリルは穴あけそのものが目的で、リーディングドリルは本加工の下穴を広げる工具という違いがあります。

Q5. センタードリルが折れる主な原因と対策は?

主な原因は、刃先摩耗に気づかず送りを続けることと、切りくずが穴に詰まって抵抗が増すことです。

刃先をこまめに確認して摩耗があれば交換し、深く送り込みすぎず途中で一度引き抜いて切りくずを排出すると折損を防ぎやすくなります。

まとめ:センタードリルの規格・種類を理解して高精度な旋盤加工を実現しよう

センタードリルは、JIS B4304(工具規格)とJIS B1011(センタ穴の形式)の対応関係を押さえることが、A形・B形・C形・R形の種類選びで迷わない第一歩です。

旋盤でセンタードリルを扱う際は、心押し台への正しい取り付けに加え、低速回転で送り始め、途中で一度引き抜いて切りくずを排出しながら刃先を確認する送り方を徹底すれば、折損を防ぎながら高精度なセンタ穴を安定して仕上げられます。

工作機械の売買・レンタルをご検討の方は、お気軽にご相談ください。