複合旋盤と複合加工機、ターニングセンタは何が違うのか、どんな機能が付いた機械なのか、分かりにくいものです。答えは、旋盤をベースにフライス加工なども行える機械で、呼び名は出典によって違うという点です。
呼び名の違いと主な機能、向く場面、中古で確認する項目を解説します。
複合旋盤とは
旋盤をベースにフライス加工なども行える機械は、出典により複合加工機、ターニングセンタ、複合旋盤などの語で説明されます。
ターニングセンタの構造や種類は、「ターニングセンタとは?NC旋盤・マシニングセンタとの違いやメリット・デメリットを解説」が詳しい解説です。
旋盤を基本にした機械と、JISの複合加工機の定義
中村留精密工業はCNC旋盤に工具回転機能を加えたものを複合加工機(複合旋盤)、ブラザー工業はNC旋盤を基本にしたものをターニングセンタと説明します。
JIS B 0105:2012の複合加工機は、回転工具主軸(工具を回す主軸)、連続割出し可能な工作主軸(工作物を回す主軸)、工具マガジンを備えます。段取り替え(付け替え)なしに旋削やフライス削りを行える、旋盤形に限らない数値制御工作機械です。
呼び名は出典ごとに分かれる
2026年10月時点の確認では、中村留精密工業が複合加工機を「複合旋盤」とも呼んでいます。
JISとJMTBAの資料に「複合旋盤」の語はありません。ブラザー工業の解説は、ターニングセンタが複合加工機とほぼ同義語というものです。
一方、JISはターニングセンタと複合加工機を別項に分け、JMTBAは旋回割出しできる回転工具主軸付きの機械を「(旋盤形)複合加工機」と呼びます。
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」(02000 旋盤、07100 ターニングセンタ、07200 複合加工機)
出典:日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」(ターニングセンタの項:「(旋盤形)複合加工機」の呼び分け)
出典:中村留精密工業「複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説」(1. 複合加工機とは)
出典:中村留精密工業「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いは?種類やメリットなどを紹介」(見出し「複合加工機(複合旋盤)」)
出典:ブラザー工業「複合加工機とは?複合加工機のメリットやマシニングセンタとの違いを解説」(ターニングセンタの特徴)
複合旋盤の主な機能と、メーカーが説明している構成
5つの機能のうち、回転工具主軸はJMTBAとマザック、B軸・Y軸・下刃物台はマザック、第2主軸はマザックとDMG森精機が説明しています。
B軸はミル主軸(フライス削り用の工具を付ける主軸)を旋回させて角度を割り出す軸、第2主軸は旋削用の主軸をもう1本備える構成、下刃物台は工具を取り付ける刃物台の一つです。
以下の仕様は2026年10月時点のメーカー説明であり、最新の仕様は各メーカーの製品ページで確認してください。
NC旋盤そのものの仕組みをまとめた記事が、「NC旋盤とは?仕組み・種類・メリットを初心者向けにわかりやすく解説」です。
回転工具主軸
JMTBAは、ターニングセンタが旋削のほかに、工具を自動で交換できる回転工具主軸を持ち、フライス削りや穴あけも行えると説明しています。
ヤマザキマザックは、INTEGREX i NEOにATC(工具自動交換装置)対応で広い可動域を持つミル主軸を搭載しています。
そのミル主軸の回転数は、標準が12000min-1、オプションが20000min-1です(2026年10月時点)。
B軸
ヤマザキマザックはINTEGREX jで、ミル主軸ユニット(B軸)を5°ごとに-30°〜190°の範囲で割出しできると説明します(1°割出し仕様はオプション、2026年10月時点)。
1本の工具を外径加工、端面加工、斜め加工に使えるため、工具本数の削減や工程集約につながるとしています。
旋回範囲は機種ごとの仕様であり、この数値はINTEGREX jの例です。
Y軸
ヤマザキマザックはINTEGREX jで、X軸・Y軸の移動量が大きいため、ワーク端面部のミル加工をC軸割出し(主軸の回転方向の位置決め)なしで行えると説明します。
Y軸ストローク(Y軸方向に動ける距離)は機種ごとの仕様項目です。マザックのINTEGREX i-100 NEOおよびi-200 NEOシリーズは210mmです(2026年10月時点)。
第2主軸
ヤマザキマザックはINTEGREX j-200Sの第2主軸仕様で第1、第2工程を連続加工でき、位相あわせ(回転方向の向き合わせ)が必要なワークの段取り時間を短縮できるとします(2026年10月時点)。
DMG森精機の説明では、2024年9月発表のNLX 2500 | 700 2nd Generationは右主軸にも10インチチャックを搭載でき、左右両面を連続で加工できます。
下刃物台
ヤマザキマザックはINTEGREX i NEOで「工程集約を実現する第2主軸仕様、下刃物台仕様を選択可能」と案内しており、第2主軸と下刃物台は機種によって選択仕様です(2026年10月時点)。
JIS B 0105のターニングセンタの項に、第2刃物台や第2主軸台などを備えた機械があるとの注記はあるものの、「下刃物台」の語は同項にありません。
出典:日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」(ターニングセンタの項:回転工具主軸の説明)
出典:ヤマザキマザック「複合加工機 INTEGREX i NEO」(ミル主軸・Y軸ストローク・第2主軸仕様・下刃物台仕様の項)
出典:ヤマザキマザック「複合加工機 INTEGREX j」(ミル主軸ユニット(B軸)・X軸・Y軸・第2主軸仕様の項)
出典:DMG森精機 プレスリリース「ターニングセンタ NLX 2500 | 700 2nd Generation」(製品概要・2024年9月12日付)
出典:JIS B 0105:2012「工作機械―名称に関する用語」(07100 ターニングセンタの注記)
複合旋盤が向く場面と、出典で説明が分かれる点
工程を1台にまとめる点は、複数の出典に共通します。一方で、出典によって説明が分かれるのが量産への向き不向きです。
工程集約で効きやすい場面
中村留精密工業は、複合加工機なら素材の着脱や工程間の移動がなくなり、加工精度低下の原因となる取付・取外しの工程を省けると説明します。
ブラザー工業の説明は、段取り替えの回数と工程間の待ち時間が減り、少量多品種に向くというものです。
中村留精密工業は、導入を検討するときには、加工内容に合っていて工程集約ができる複合加工機を選ぶことが大切だと説明しています。
量産への向き不向きは出典で説明が分かれる
ブラザー工業の説明は、一度のセットアップで複数の加工を行うため、何千個、何万個と生産する製品には不向きで、小ロットの加工に向く、というものです。
中村留精密工業は、自社の複合加工機が試作や小ロット生産から量産まで幅広く対応できるとしています。
出典:中村留精密工業「複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説」(4. 複合加工機のメリット)
出典:中村留精密工業「複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説」(2. 複合加工機の種類)
出典:中村留精密工業「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いは?種類やメリットなどを紹介」(見出し「複合加工機(複合旋盤)」末尾の段落)
出典:ブラザー工業「複合加工機とは?複合加工機のメリットやマシニングセンタとの違いを解説」(複合加工機のメリット・多品種少量生産への対応)
中古の複合旋盤を探すときの確認項目
新品の製品ページで選択仕様や機種ごとの仕様とされている構成を手がかりに、仕様表では次の4項目を確かめます。
中古工作機械全般の買い方は、「中古工作機械の選び方|種類・購入ルート・導入時の注意点を解説」にまとめています。
- 第2主軸の有無:連続加工に使う構成が付いているかどうかです。
- 下刃物台の有無:工程集約に使う構成が付いているかを見ます。
- 回転工具主軸の仕様:回転速度などの仕様値が、必要な加工に合うかどうかです。
- 軸の動く範囲:Y軸ストロークはマザックとオークマの仕様に載る項目で、B軸の旋回範囲はマザックのINTEGREX jの製品ページに載る項目です。機種ごとに値が異なるため、数値で比べます。
稼働時間や保守の履歴といった中古ならではの機械の状態は、仕様表からは読み取れないため、現物の確認や販売元への問い合わせで確かめる項目です。
出典:ヤマザキマザック「複合加工機 INTEGREX i NEO」(第2主軸仕様・下刃物台仕様・Y軸ストロークの項)
出典:ヤマザキマザック「複合加工機 INTEGREX j」(ミル主軸ユニット(B軸)の旋回範囲の項)
出典:オークマ「MULTUS BⅡ series」(広い加工領域・機械仕様表)
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(2026年10月時点)。
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出典:シェアリングファクトリー株式会社 公式サイト トップ(「シェアリング ファクトリーとは。」)
複合旋盤についてよくある質問
Q1. 旋盤ベースとマシニングセンタベースの複合加工機は何が違いますか?
旋盤ベースの複合加工機は主軸で素材をチャッキング(チャックでつかむこと)して削り、マシニングセンタベースの複合加工機は治具で素材をクランプ(固定すること)して工具主軸で削ります。
分類は中村留精密工業の解説によるものです。詳しい構造は、「マシニングセンターとは?種類・構造・価格をわかりやすく解説」で解説しています。
Q2. 立形や門形の機械も複合加工機に含まれますか?
オークマは、立形複合加工機や門形複合加工機も「複合加工機」として掲載しています
(2026年10月時点)。旋盤形に限る場合は、JMTBAが「(旋盤形)複合加工機」と書き分けるのが一例です。
Q3. 複合旋盤はロボットによる自動化に向いていますか?
中村留精密工業は、4台の機械を使う作業を自動化する場合、複合加工機ならロボットは1台で足りると説明しています。
Q4. 回転工具主軸の回転速度やY軸ストロークは、機種でどのくらい違いますか?
オークマのMULTUS BⅡシリーズの機械仕様表では、Y軸ストロークが160mm〜230mmです。
回転工具主軸の回転速度は、6,000min-1と12,000min-1の機種に分かれています(2026年10月時点)。
Q5. NC旋盤とマシニングセンタの2台を1台にまとめられますか?
オークマはMULTUS B IIの製品ページで、NC旋盤とマシニングセンタで構成する分割型の生産ラインを複合加工機1台に集約できると説明しています。
挙げる効果は、納期の短縮、工場スペースの有効利用、セットアップ工数の削減などです(2026年10月時点)。メーカーの説明であり、導入先の工程によって効果は変わります。
出典:中村留精密工業「複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説」(2. 複合加工機の種類、4. 複合加工機のメリット・自動化)
出典:オークマ「製品情報」(複合加工機・立形複合加工機・門形複合加工機の掲載)
出典:日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」(ターニングセンタの項の末尾:旋回割出しできる回転工具主軸を備える機械の呼称)
出典:オークマ「MULTUS BⅡ series」(機械仕様表、製品ページ冒頭「複合加工がより身近に」)
まとめ:旋盤ベースでフライス加工もこなす機械は、呼び名より仕様ページの構成で見極める
複合旋盤と呼ばれる機械は、旋盤にフライス加工などの機能を加えた、出典ごとに呼び名と区分が異なる機械です。
呼び名よりも、回転工具主軸、第2主軸、下刃物台といった構成が仕様ページにあるかを見ます。量産の向き不向きはブラザー工業と中村留精密工業とで説明が分かれるため、検討中の機種のメーカーの説明で確かめます。
まずは自社の加工内容を書き出し、各メーカーの仕様ページの構成と照らし合わせてください。
工作機械の売買・導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
