旋盤で作れるものと作れないものは、形の見分け方で整理できます。旋盤は工作物を回転させて削る機械で、日本工作機械工業会の定義は「一般に円筒または円盤状の工作物を回転させて加工する機械」です。
形状ごとの加工、部品例、作れない形、機種による違いを解説します。
旋盤で作れるものは、工作物を回転させて削れる円筒・円盤状の形が中心
作れる形の範囲は、旋盤が材料を削る仕組みで決まります。旋盤は、回転する工作物へ刃物状の工具を当てて削る機械です。本記事が対象にするのは金属を削る旋盤です。
旋盤は工作物を回転させ、静止したバイトで削る機械
JIS B 0105は、旋盤を「工作物を回転させ,主としてバイトなどの静止工具を使用して」切削加工を行う工作機械と定義しています。バイトは刃物状の工具です。
外丸削り、中ぐり、突切り、正面削り、ねじ切りは「など」で閉じた例示で、行える加工はこれらに限りません。
回転するのは工作物なので、向くのは円筒または円盤状の工作物
日本工作機械工業会(JMTBA)による旋盤の定義は「一般に円筒または円盤状の工作物を回転させて加工する機械」です。
メーカーの解説も、材料を回転させて加工するため、円筒形の材料が旋盤加工に向くと説明しています。
出典:キーエンス「切削加工の種類」(旋盤加工の項:バイトという刃物状の工具の記載)
出典:JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語(3 用語及び定義 b) 旋盤 02000)
出典:日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」(旋盤の項)
出典:中村留精密工業「旋盤加工とは?」(2. 旋盤加工とは?)
旋盤で作れる形状と、その形を削る加工
旋盤で作れる形は、削る場所ごとに7つに整理できます。
加工の手順は「旋盤加工とは?加工の種類・手順・メリットをわかりやすく解説」で扱っています。
外周が円筒になる形(外丸削り)
JIS B 0106は、外丸削りを「バイトを用いて工作物の外周を円筒状にする旋削」と定義しています。メーカーの解説では、軸やシャフトなど回転対称の部品の基本的な加工の1つです。
端面が平らな形(面削り)
面削りは、JIS B 0106が「工作物の端面を平面状にする旋削」と定義する加工です。JIS B 0105の旋盤の定義には、加工の例として正面削りが挙がっています。
内側に穴が空いた形(中ぐり・穴あけ)
中ぐりは、JIS B 0106でバイトを用いて穴をくり広げる切削と定義され、工作物が回る場合とバイトが回る場合があります。
メーカーの解説では、ベアリングのはまり込み部分など、精密な内径が必要な場面で使う加工です。
先が細くなる円錐状の形(テーパ削り)
テーパ削りは、JIS B 0106で「工作物をテーパ状にする旋削」と定義された加工です。メーカーの解説は、直径が徐々に変化するすり鉢状の形を削る加工としています。
ねじ山が付いた形(ねじ切り)
ねじ切りは、旋削によって工作物にねじを削り出す方法です(JIS B 0106)。メーカーの解説では、外ネジと内ネジの両方を加工できます。
環状の溝が入った形(溝加工)
溝加工は、部品の外周や内径に環状の溝を入れる加工です。メーカーの解説は、止め輪用のC形溝やOリング溝を代表例に挙げています。
JIS B 0106には、主にバイトで逃げ溝を作り出す旋削として、逃げ溝切りも定義されています。
表面に円弧の曲面が付いた形(円弧加工)
円弧加工は、部品の表面に曲線(円弧)を付ける加工です。メーカーの解説では、汎用旋盤が複数の切削を組み合わせて行い、CNC旋盤は自動制御で滑らかに加工します。
出典:JIS B 0106:2016 工作機械―部品及び工作方法―用語(3 用語の分類 b) 工作方法)
出典:中村留精密工業「旋盤とは? 加工対象から機械構成などを解説!」(5. 旋盤を使った加工の種類:外径・内径・端面・ネジ・溝・テーパー・円弧の各項)
旋盤で作れる部品の具体例
部品名から逆引きするときは、出典が例に挙げる部品が手がかりです。旋盤だけで完成するものと、後工程が要るものがあります。
代表的な部品は、シャフト(軸)・フランジ・継手
メーカーの解説が旋盤加工の代表的な部品として挙げるのは、シャフト(軸)、フランジ、継手です。同じ解説に載る産業分野は、自動車部品や航空機部品、精密機器の製造です。
ボルトやナットは、旋盤加工だけで完成品になるものもある
メーカーの解説には、ボルトやナットなど旋盤加工だけで完成品となるものもある一方で、旋盤加工のあとに後工程を経て完成品となる部品が多いとも書かれています。
技能検定3級の課題は、部品Aと穴ぐりをした部品Bのはめ合わせ
厚生労働省の教材(令和8年3月の改訂版)は、3級技能検定・普通旋盤作業の実技課題を示しています。加工仕様は、部品Aと部品Bの外側を旋盤で削ることと、部品Bの穴ぐり(穴を削り広げる加工)をすることです。
2つをはめ合わせた状態での提出が条件です。
出典:中村留精密工業「旋盤加工とは?」(2. 旋盤加工とは?の代表的な部品/5. 後工程を経た後で完成品になる部品が多い)
出典:厚生労働省「3級技能検定の実技試験課題を用いた人材育成マニュアル 機械加工(普通旋盤作業)編(改訂版)」(課題条件と製作物:PDF p.11)
旋盤だけでは作れないものと、補う機械
旋盤が向くのは、円筒または円盤状の工作物を回転させて削る加工です。回転軸とは別の角度の加工や、角ばった形は、別の機械が受け持つ場合があります。
回転軸と別の角度の穴あけ・切り欠きは旋盤ではできない
メーカーの解説によると、回転軸とは別の角度から行う穴あけと切り欠きは、旋盤では加工できない形です。
同じ解説によれば、フライス加工を行うマシニングセンタやフライス盤を旋盤とセットで設置する工場も多いとされます。
角ばった形の平面・段差・溝は、一般にフライス盤の領域
フライス盤は、角ばったものに平面を作ったり、段差をつけたり、溝を入れたり、穴をあけたりする機械です。端面の平面は旋盤でも面削りで削れるので、平面のすべてがフライス盤の仕事とは限りません。
詳しくは「フライス盤とは?種類・加工方法・旋盤との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
ドライブシャフトは、従来は旋盤のあとにマシニングセンタとホブ加工が必要だった
自動車のドライブシャフトは、従来の工程で、旋盤加工(1工程目・2工程目)に続いてマシニングセンタとホブ加工(2工程)が必要でした。メーカーの解説が挙げる一例です。
出典:中村留精密工業「旋盤加工とは?」(5. 後工程を経た後で完成品になる部品が多い:回転軸と別の角度の穴あけ・切り欠き)
出典:中村留精密工業「フライス盤とは?旋盤とどう使い分ける?」(2. フライス盤と旋盤、その使い分けは?)
出典:中村留精密工業「複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説」(5. 複合加工機で作る代表的なワーク:ドライブシャフト)
旋盤の種類によって作れるものはどう変わるか
機種が変わると、加工の進め方と、一台で行える加工の範囲が変わります。
特にターニングセンタと複合加工機は、旋削のほかにフライス削りまで扱えます。機種を選ぶ段階では、「中古旋盤の選び方・価格相場・購入先を徹底解説【失敗しない7つのポイント】」も参考になる記事です。
制御方式や構造による分類は「旋盤の種類を徹底解説|制御方式・構造・用途で分類」にまとめました。
汎用旋盤では、円弧加工に複数の切削を組み合わせ、検定の課題ではテーパ加工の技能も求められる
メーカーの解説では、汎用旋盤の円弧加工は複数の切削を組み合わせて行います。厚労省の教材は、3級技能検定の必要技能に、複式刃物台のテーパ加工を挙げています。
汎用旋盤は、メーカーの解説で「汎用旋盤(普通旋盤)」と併記される機械です。JISの見出し語は「普通旋盤」で、厚生労働省の教材も同じ語を使っています。
NC旋盤は数値制御で、多くのバイトを自動で使い分けて形を作る
JIS B 0105の注記は、数値制御によるものを特に数値制御旋盤と呼ぶ、という内容です。メーカーの解説では、あらかじめ設定した手順で数十種類に及ぶバイトを使い分け、自動加工を行います。
NC自動旋盤は長い棒材から同じ形を連続で作る
NC自動旋盤は、長い棒状の材料から同一形状の工作物を製造する加工で、カム式の自動盤に替わって登場した機械です。
ターニングセンタと複合加工機は、旋削にフライス削りや穴あけを足せる
JMTBAは、ターニングセンタを旋盤を複合化したNC工作機械とし、フライス削りや穴あけも行えると説明しています。旋回(割出し)しながら加工できる回転工具主軸を備えるものが「(旋盤形)複合加工機」です。
JISは両者を別項で定義し、旋盤の節ではなく多軸制御・複合工作機械の節に置いています。メーカーの解説では「複合加工機(複合旋盤)」とも書かれます。
出典:中村留精密工業「旋盤とは? 加工対象から機械構成などを解説!」(5. 旋盤を使った加工の種類:円弧加工)
出典:厚生労働省「3級技能検定の実技試験課題を用いた人材育成マニュアル 機械加工(普通旋盤作業)編(改訂版)」(技能の内容:PDF p.11〜13)
出典:キーエンス「切削加工の種類」(NC旋盤の項:NC自動旋盤)
出典:日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」(ターニングセンタの項)
出典:JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語(b) 旋盤 02000の注記・02100 普通旋盤、g) 多軸制御・複合工作機械 07100 ターニングセンタ/07200 複合加工機)
出典:中村留精密工業「旋盤とは? 加工対象から機械構成などを解説!」(3. 旋盤の種類:汎用旋盤(普通旋盤))
出典:中村留精密工業「CNC旋盤とは?NC旋盤との違いは?」(CNC旋盤に工具回転機能を付加した「複合加工機(複合旋盤)」)
工作機械の売買・導入はシェアリングファクトリーへ
旋盤は、同じ名前でも機種によって行える加工が異なります。中古の工作機械を探すときは、作りたい部品が旋盤だけで完成するか、フライス加工などの後工程が要るかを先に見ておくと、候補を絞りやすくなります。
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旋盤で作れるものについてよくある質問
Q1. 旋盤と旋削は同じ意味ですか?
旋盤は工作機械の名称で、旋削は工作物を回転させて行う切削の方法です。
JIS B 0106の旋削の定義は「工作物を回転させ,バイトに送り運動を与えて行う切削」です。
Q2. 旋盤で使うバイトの種類によって、作れる形は変わりますか?
基本となる右片刃バイトをはじめ、突切りバイトや中ぐりバイトなどを使い分けることで、さまざまな形状を作り出せます。
Q3. JISでは、旋盤はどのような種類に分けられていますか?
JIS B 0105には、普通旋盤、卓上旋盤、タレット旋盤、自動旋盤、立て旋盤、正面旋盤などが挙がっています。
一方で、「汎用旋盤」「NC旋盤」「複合旋盤」は、見出し語に載っていない呼び名です。
Q4. NC自動旋盤は、従来のカム式自動盤と何が違いますか?
NC自動旋盤は、カム式自動盤のカムに替わって、プログラム制御で加工を行う機械です。
測定機器メーカーの解説によると、カム式の自動盤は従来、長い棒状の材料から同じ形の工作物を製造するために使われてきました。
Q5. 複合加工機一台で完成させられる部品には、どんなものがありますか?
メーカーの解説は、ドライブシャフト、ポンプカバー、ノーバックハウジングを、複合加工機一台で完成させられる部品に挙げています。
ポンプカバーはオイルポンプの蓋、ノーバックハウジングは航空機に使われる部品です。いずれも同じ解説の例示で、作れる部品の全体ではありません。
出典:JIS B 0106:2016 工作機械―部品及び工作方法―用語(3 用語の分類 b) 工作方法:旋削の定義)
出典:キーエンス「NC旋盤」(NC旋盤の主な種類:基本となる右片刃バイトの記載)
出典:JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語(3 用語及び定義 b) 旋盤 02100〜02909:旋盤の種類)
出典:キーエンス「切削加工の種類」(2. NC旋盤の項:カム式の自動盤とNC自動旋盤)
出典:中村留精密工業「複合加工機とは?旋盤との違いを徹底解説」(5. 複合加工機で作る代表的なワーク)
まとめ:旋盤が得意なのは円筒・円盤状の形で、角ばった形は一般にフライス盤の領域
旋盤は工作物を回転させて削る機械なので、作れる形は円筒または円盤状が中心です。ボルトやナットのように旋盤だけで完成するものもありますが、多くの部品は後工程を経て完成します。
回転軸と別の角度の穴あけは旋盤ではできず、角ばった形の平面や段差は一般にフライス盤の領域です。
まず作りたい部品の形と加工内容を書き出し、旋盤で足りるか、後工程が要るかを分けてみてください。
工作機械の売買・導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
