旋盤の操作に資格は要るのか、技能検定は何級から受けられるのかと迷う場面があります。安衛法施行令第20条の免許・技能講習の業務と、安衛則第36条が挙げる特別教育の業務に、旋盤の操作は入っていません。
評価されるのは国家検定の機械加工技能士です。
3級・2級を中心に、受検条件と試験内容、申請の流れを解説します。
旋盤の操作に法令上の資格は必要か
2026年10月時点の労働安全衛生法施行令第20条と安衛則第36条は、旋盤の操作を免許・技能講習・特別教育の対象に挙げておらず、旋盤作業に就く条件として技能検定の合格を求める規定も見当たりません。確認した規定は、免許・技能講習、特別教育、雇入れ時等の教育の3つです。
免許・技能講習が必要な業務に旋盤は挙げられていない
労働安全衛生法第61条第1項は、クレーンの運転など政令で定める業務に、免許を受けた者や技能講習を修了した者等でなければ就かせてはならないと定めています。
政令にあたる施行令第20条は、発破、ボイラー、クレーン、フォークリフト、玉掛けなどを16号にわたって列挙しますが、旋盤の操作は挙がっていません。
安衛則第36条が挙げる特別教育に旋盤の操作は含まれない
特別教育は、危険または有害な業務に就かせるとき、事業者が安衛法第59条第3項に基づいて行う教育です。
対象業務は労働安全衛生規則第36条が列挙し、研削といしの取替え(取替えの際の試運転を含む)やアーク溶接などが並びますが、旋盤の操作は含まれません。
ただし雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育は必要
事業者は、労働者を雇い入れたときと作業内容を変更したときに、従事する業務の安全衛生教育を行わなければなりません(安衛法第59条第1項・第2項)。
安衛則第35条は、遅滞なく、業務に関する安全または衛生のため必要な事項を教えるよう定めています。
安全面の手順は「旋盤の使い方を初心者向けに解説|基本手順と安全のコツ」で扱っています。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第61条第1項(就業制限)・第59条第1項〜第3項(安全衛生教育)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第20条(就業制限に係る業務)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第35条(雇入れ時等の教育)・第36条(特別教育を必要とする業務)
旋盤の資格は国家検定の機械加工技能士
旋盤の技能を証明する国家検定は、技能検定の機械加工職種です。旋盤に関する検定は、機械加工職種の2作業で、実施と申請は都道府県の協会が担います。
技能検定は職業能力開発促進法に基づく国家検定
技能検定は、働くうえで身に付ける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、機械加工を含む133職種があります(2026年10月時点)。
職業能力開発促進法第44条第3項は、技能検定を実技試験と学科試験によって行うと定めています。
旋盤の技能検定は機械加工職種の普通旋盤作業と数値制御旋盤作業
旋盤に関する技能検定は、職種「機械加工」のうち「普通旋盤作業」と「数値制御旋盤作業」の2作業です。
受検の窓口は都道府県協会で、JAVADAは申請を受け付けない
実施機関は、都道府県、都道府県職業能力開発協会、指定試験機関です。制度所管は厚生労働省、問題作成は中央職業能力開発協会(JAVADA)が担います。
JAVADAは受検申請の受付、試験実施、合格発表を行っておらず、申請は受検する都道府県の協会が窓口です。
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.1 表紙 実施機関・問題作成・制度所管、p.2「1 技能検定とは」)
出典:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」第44条(技能検定)第3項
出典:中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」(受検申請受付・試験実施・合格発表の注記)
出典:中央職業能力開発協会「令和8年度(前期)実施職種(作業)一覧」(機械加工 普通旋盤作業・数値制御旋盤作業)
3級・2級・1級の違いと受検条件
技能検定の等級は、難易度によって1級・2級・3級に分かれ、職種によっては単一等級や管理・監督者向けの特級もあります。受検に必要な実務経験年数は、学歴・訓練歴と受検する等級で決まります。
(単位:年。出典の表から代表的な4区分を抜粋し、区分名を要約)
|
受検対象者 |
3級 |
2級 |
2級(3級合格後) |
1級 |
1級(2級合格後) |
1級(3級合格後) |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
実務経験のみ |
0(※) |
2 |
0 |
7 |
2 |
4 |
|
専門高校卒業 |
0 |
0 |
0 |
6 |
2 |
4 |
|
短大・高専・高校専攻科卒業 |
0 |
0 |
0 |
5 |
2 |
4 |
|
大学卒業 |
0 |
0 |
0 |
4 |
2 |
4 |
受検資格は、関連する実務経験のある検定職種や、卒業・修了した学科・訓練科に関する検定職種に限って得られます。機械科は、機械加工の受検が認められる主な例のひとつです。
受検資格や免除資格は審査で判断され、詳しい扱いは都道府県の協会が案内します。
3級:実務経験が要る区分と要らない区分
3級を実務経験のみで受ける場合も、必要な年数は0年ですが、検定職種に関する実務経験があることが条件です(表の※)。専門高校・短大・高専・高校専攻科・大学の卒業者は、実務経験がなくても受けられます。
2級:実務経験のみの場合と3級合格後の場合で条件が違う
2級を実務経験のみで受ける場合は、実務経験を2年積む必要があります。表の学歴別の区分と、3級に合格している場合は、実務経験年数が0年です。
1級:実務経験のみ・2級合格後・3級合格後の3パターン
1級は、実務経験のみ・2級合格後・3級合格後の3パターンで条件が分かれます。2級合格後は3級合格後より年数が短く、実務経験のみの区分でも学歴が上がるほど年数が短くなります。
特級は、職種によって設けられる管理・監督者向けの等級です。受検資格の表では、1級に合格した後の実務経験が5年とされています。
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.4「●受検資格」の表と脚注※1〜※7)
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.6「主な学科名/受検が認められる主な技能検定職種」の機械科の行)
普通旋盤作業と数値制御旋盤作業の違い
どちらを受けるかを選ぶ基準は、手元で扱う機械と仕事の内容です。普通旋盤作業は材料を削って部品を作る試験、数値制御旋盤作業はプログラムの作成から始める試験という違いがあります。
普通旋盤作業:S45C材ではめ合わせの部品を作る
センタ間の最大距離が500〜1500mm程度の普通旋盤でS45C材を加工し、はめ合わせできる部品を製作します。製作個数は1級が3個、2級と3級が2個です。
令和8年度の実施一覧では、1・2級が前期のみ、3級が前期と後期です(2026年10月時点)。使い方は「汎用旋盤とは?構造・使い方・NC旋盤との違いをわかりやすく解説」で解説しています。
数値制御旋盤作業:プログラム作成から切削加工まで
プログラム作成、入力、確認、切削加工の順に製作します。1・2級には計画立案等作業試験が加わり、3級は製作等作業試験のみです。
令和8年度の一覧では前期のみの実施です(2026年10月時点)。プログラムの作り方は「NC旋盤のプログラムの書き方|Gコード・座標・例題で基本を解説」で解説しています。
出典:中央職業能力開発協会「令和8年度(前期)実施職種(作業)一覧」(●1・2級 No.8・No.9、●3級 No.7・No.8)
出典:中央職業能力開発協会「令和8年度(後期)実施職種(作業)一覧」(●3級 機械加工 普通旋盤作業)
出典:中央職業能力開発協会「令和8年度(前期)技能検定 実技試験問題の概要」(B8・D7 普通旋盤作業、B9・D8 数値制御旋盤作業)
旋盤の技能検定の試験内容と合否ライン
技能検定は、実技試験と学科試験の両方に合格することが条件です。実技の時間には標準時間と打切り時間の2種類があり、等級と作業で数値が違います。
学科試験:出題形式と試験時間は等級で違う
1級と2級は、真偽法と多肢択一法が25問ずつの全50問で、試験時間は1時間40分です。3級は真偽法のみ30問で、試験時間は1時間です。
実技試験:標準時間と打切り時間の2種類がある
標準時間を超えると、超過した時間数に応じて減点されます。試験の時間と内容は一部変更される場合があり、最新の情報はJAVADAのページで確認します。
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作業 |
等級 |
標準時間 |
打切り時間 |
計画立案等作業試験 |
|---|---|---|---|---|
|
普通旋盤作業 |
1級 |
3時間30分 |
4時間 |
なし |
|
普通旋盤作業 |
2級 |
3時間 |
3時間30分 |
なし |
|
普通旋盤作業 |
3級 |
2時間 |
2時間30分 |
なし |
|
数値制御旋盤作業 |
1級 |
4時間 |
4時間30分 |
1時間30分 |
|
数値制御旋盤作業 |
2級 |
4時間 |
4時間30分 |
1時間30分 |
|
数値制御旋盤作業 |
3級 |
2時間30分 |
3時間 |
なし |
合否ラインと、片方だけ合格した場合の扱い
合否ラインは100点満点で、原則として実技試験が60点以上、学科試験が65点以上です。「原則として」の表記のとおり、職種や作業で異なる場合があります。
実技と学科のどちらか片方だけに合格した場合は、次回以降、不合格だった試験のみを受検して合格すれば技能士になれます。ただし特級だけは、5年以内という期限付きです。
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.3「学科試験」、p.5「試験の合否ライン」、p.2 右「技能検定の実施内容」)
出典:中央職業能力開発協会「実施職種・試験概要(実技試験及び学科試験)」(学科試験の概要の表)
出典:中央職業能力開発協会「令和8年度(前期)技能検定 実技試験問題の概要」(p.4〜5 B8・D7 普通旋盤作業、B9・D8 数値制御旋盤作業)
受検の流れと費用
受検までの流れは、申請書類の提出、手数料の納付、試験日程の確認の順です。日程と手数料は年度や都道府県で変わるため、受検地の協会の公示が最終の基準です。
申請書類の提出と受検資格の審査
受検申請書を取り寄せて記入し、写真を貼り、手数料を納めたうえで、受付期間内に郵送または持ち込みで協会へ提出します。提出後に受検資格や免除資格の審査があり、詳しい扱いは受検地の協会が案内します。
受検手数料の目安と、3級の23歳未満の減額
受検手数料の目安は、学科試験が3,100円、実技試験が18,200円で、加算した目安は21,300円です。ただし目安のため、都道府県で異なる場合があります。
減額の対象は、ものづくり分野の3級の実技試験を受検する23歳未満の方です。減額額は都道府県で異なり、旋盤の2作業が対象に当たるかも含めて、受検地の協会の公示で確認します。
前期・後期の実施と、都道府県によっては随時実施もある
令和8年度は、職種ごとに前期と後期に分かれて実施されます(2026年10月時点)。定期とは別に随時実施の枠を設ける都道府県もあり、等級と職種は県ごとの公示で決まる形です。
最新の日程は、JAVADAの日程ページと受検地の協会の公示で確認します。
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.3「受検の申請について(1)申請方法」「(2)受検手数料」)
出典:中央職業能力開発協会「技能検定試験の日程」(令和8年度実施日程の表)
出典:長野県「令和8年度技能検定(随時実施する2級)実施公示」(1 実施する検定職種及びその等級)
受検に向けた準備の進め方
学科は公開資料で出題範囲を確かめられ、実技は実機で部品を製作する試験です。
出題範囲は試験基準と実技試験問題の概要で確認する
出題範囲の公開先は、厚生労働省のホームページの「試験基準」です。
実技試験問題の概要はJAVADAのページで事前に確認でき、令和7年度の定期試験問題と随時試験問題は、技能検定試験問題公開サイトで公開されています(2026年10月時点)。
実技は実機で部品を製作する試験
実技試験は、旋盤を使って材料を削り、はめ合わせできる部品を製作する形式です。
従業員に受検させる事業者は、練習用の旋盤の用意を検討する
従業員に受検させる事業者にとっては、実技の練習用に旋盤を用意するかどうかが検討事項のひとつです。
中古を含めた選び方と価格相場は、「中古旋盤の選び方・価格相場・購入先を徹底解説【失敗しない7つのポイント】」で解説しています。
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.3〜5 出題範囲と試験基準の記載)
出典:中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」(お知らせ欄 令和7年度定期試験問題・随時試験問題の公開)
旋盤の導入・入れ替えを考えるならシェアリングファクトリー
シェアリングファクトリーは、中古工作機械の売買サービスです。旋盤をはじめとする工作機械の導入や入れ替えを検討する事業者が、掲載機械から探したり、不要になった機械を出品したりできます。
練習用の設備や現場の設備更新で旋盤が必要になったときは、売買サイトで掲載機械を探せます。
工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。
旋盤の資格についてよくある質問
Q1. 旋盤の技能検定に合格すると、どう名乗れますか?
職業能力開発促進法第50条第1項は、技能検定の合格者は「技能士と称することができる」と定めています。
第2項は、称するときは合格した職種と等級の表示を定め、合格していない職種や等級の表示を禁じる内容です。技能士でない人は、第4項により「技能士」の名称を用いてはなりません。
旋盤の技能検定は職種「機械加工」の作業なので、表示するのは合格した職種と等級です。
Q2. 学校に通いながらでも受検できますか?
3級は、検定職種に関する学科の在学者や、関連する訓練科で職業訓練を受けている人も受検できます。
工業高校の在学者などは、教員等による検定職種の講習を受け、講習の責任者から安全衛生上の問題がないと判定されれば受検できます。受検資格の審査があるため、詳しい扱いは受検地の協会で確認する形です。
Q3. 技能五輪全国大会に出るには技能検定の資格が必要ですか?
技能五輪全国大会は技能を競う大会で、技能検定の合格は出場資格に挙げられていません。
第64回の旋盤職種の二次予選会の募集要項は、全国大会開催年に23歳以下であること、二次予選の実施時に2級実技試験(普通旋盤作業)の合格水準に達していることなどを出場資格にしています。
合格水準は、申請時には問われない条件です。
第63回の入賞者で都道府県協会の推薦がある人は、二次予選会が免除されます。
Q4. 受検当日に、免許や特別教育の修了証が必要になりますか?
令和8年度の一覧では、旋盤の2作業は、当日に免許や特別教育の修了証の確認を要する職種に入っていません。
確認を要する職種(令和8年度前期は14件)の例は、金属プレス加工、鉄工、工場板金、切削工具研削などです。年度で変わる場合があるため、最新の一覧の確認先はJAVADAのページです。
Q5. 受検したい都道府県で旋盤の試験を実施していない場合は?
都道府県によっては、試験を実施しない職種や作業があります。
受検地の協会の公示で、旋盤の作業が実施されるかを確認します。
出典:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」第50条(合格者の名称)第1項・第2項・第4項
出典:厚生労働省・中央職業能力開発協会「令和8年度 技能検定 受検案内(全等級用)」(p.4 受検資格の表の脚注※4、p.2 実施する職種の注記)
出典:中央職業能力開発協会「第64回技能五輪全国大会「旋盤」職種二次予選会選手募集要項」(4 出場資格等)
出典:中央職業能力開発協会「技能検定試験において免許、特別教育等が必要な職種(作業)一覧(R8年度前期実施分)」(No.1〜14)
まとめ:旋盤の操作は免許や特別教育の対象外で、技能は国家検定の機械加工技能士で示せる
旋盤の操作は、施行令第20条の免許・技能講習や安衛則第36条の特別教育の対象に入っておらず、技能を示す国家検定が機械加工技能士です。
受検条件は、等級ごとに実務経験や学歴で変わります。試験は学科と実技の両方に合格することが条件で、実技には標準時間と打切り時間の2種類があります。
受検を考える場合は、受検地の協会の公示で最新の日程を確認してください。
工作機械の売買・導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
