旋盤は自作できるのか、作るなら何に気をつければよいのか。JISの旋盤の用語規格は主として金属切削が対象で、普通旋盤の精度はJISが検査項目を定めています。
旋盤の定義から、メーカー説明書や事故事例の注意、市販機・中古機という選択肢まで解説します。
旋盤の自作前に知りたい、JISの定義と適用範囲
JIS B 0105:2012は、主として金属切削に用いる工作機械の用語として旋盤を定義した規格です。
規格の適用範囲を見ると、JIS B 0105の用語は主として金属切削、JIS B 6202は汎用の普通旋盤の精度検査が対象です。
マキタの電気ドリル3機種(6300-4・M816・DD2020)の説明書には、旋盤として使う記載がありません。
旋盤とは何か、JISはどう定義しているか
JIS B 0105:2012による旋盤の定義は「工作物を回転させ,主としてバイトなどの静止工具を使用して,外丸削り,中ぐり,突切り,正面削り,ねじ切りなどの切削加工を行う工作機械」です。
JIS B 0105の適用範囲は金属切削で、木工旋盤は見出し語にない
JIS B 0105:2012の適用範囲は「主として金属切削に用いる工作機械の名称に関する用語」で、木工旋盤は見出し語として載っていません。
一方で、木材を回して加工する機械は市販されており、PROXXONの国内販売元は「丸棒や木材を回して加工したい」ときの製品として、ウッドレースを案内しています。
出典:kikakurui「JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語」(用語表 02000 旋盤・1 適用範囲)
出典:PROXXON国内販売元 キソパワーツール「デスクトップツール・よくあるご質問」(丸棒や木材を回して加工したい → ウッドレース)
旋盤の基本構造と、JISが定める各部の定義
JIS B 0105:2012による普通旋盤の定義は「水平面内で回転する主軸,ベッド,主軸台,心押台,往復台,送り機構などからなる基本的な旋盤」です。
各部の定義文は、JIS B 0106:2016に載っています。
主軸と主軸台
JIS B 0106:2016による主軸の定義は「工作物を取り付けて回転運動を与える軸」、主軸台の定義は「工作物を回転させる主軸を備えている台」です。
ベッドと心押台
ベッドは「機械の本体を構成し,案内面をもつ台」、心押台は「ベッド上の主軸台の反対側にあり,工作物の一端を支える台」と定義されています。
往復台と刃物台
往復台の定義は「エプロン,サドル,横送り台,刃物台などからなり,ベッド上を往復して刃物の送り運動を行う台」、刃物台の定義は「刃物その他を取り付ける台」です。
出典:kikakurui「JIS B 0106:2016 工作機械―部品及び工作方法―用語」(旋盤の用語表:主軸・主軸台・心押台・往復台・刃物台・ベッド)
出典:kikakurui「JIS B 0105:2012 工作機械―名称に関する用語」(用語表 02100 普通旋盤)
電動ドリルを動力に使う自作で知っておきたい、マキタの取扱説明書にある注意
電動ドリルを動力にする自作の話題では、メーカーの取扱説明書が手がかりになります。用途と固定の注意を確かめる対象は、マキタの電気ドリル2機種(説明書の型番6300-4・M816)です。
マキタの電気ドリル2機種は「指定された用途以外に使用しない」と求めている
マキタの電気ドリル6300-4の取扱説明書にある注意は「指定された用途以外に使用しないでください」、M816の説明書にある注意は「指定された用途以外に使用すると、事故の原因になります」です。
6300-4の説明書は、記載外の付属品やアタッチメントも事故やけがの原因になると説明し、安全規格に適合した製品として改造の禁止も注意事項に挙げています。
マキタの説明書は、加工する物の固定を求めている
6300-4の説明書にある注意は「加工する物をしっかりと固定してください」で、クランプや万力の利用も挙げています。
M816の説明書にも「材料を加工する工具では、材料をしっかりと固定してください」とあり、いずれも電気ドリルで加工する物についての注意です。
ドリル本体を固定して、回る工作物を削る使い方についての記載ではありません。
マキタのドリルスタンドの説明書は、ドリルの取り付けの固定を求めている
マキタ43型ドリルスタンドは、ドリルを取り付けて穴をあける補助具です。説明書は、ドリルをスタンドに取り付けるときに固定がゆるいとけがの原因になると記しています。
出典:マキタ「取扱説明書 13mm四段変速ドリル 6300-4」(安全上のご注意 警告8・13・22・23)
出典:マキタ「取扱説明書 M816 震動ドリル」(電動工具の使用 3、その他の安全事項 3)
出典:マキタ「取扱説明書 43型ドリルスタンド」(安全上のご注意 警告1・ドリルスタンドの使い方)
普通旋盤の精度は、JIS B 6202が検査項目を定めている
JIS B 6202:1998「普通旋盤―精度検査」は、汎用の普通旋盤の静的精度と工作精度について、検査方法と検査事項ごとの許容値を定めた規格です。許容値の数値は、機種の区分や寸法で変わります。
ベッドの滑り面の真直度
JIS B 6202:1998の静的精度検査(表1)で、ベッドの検査事項は「滑り面の真直度」です。
検査は垂直面内の縦方向と横方向に分けて示されています。
主軸の振れ
表1の主軸の項目は、「主軸フランジ端面の振れ」「主軸端外面の振れ」「主軸中心線の振れ」「主軸センタの振れ」です。
JIS B 6202は汎用の普通旋盤の規格で、適用範囲の文に木工旋盤の記載はありません。
主軸台センタと心押台センタとの高さの差
表1の両センタの項目は、「主軸台センタと心押台センタとの高さの差」です。
許容値の欄には「心押台側が低くてはならない」とあり、高さの差を検査する項目です。
出典:kikakurui「JIS B 6202:1998 普通旋盤―精度検査」(1 適用範囲・4 静的精度検査 表1)
旋盤の事故事例と、マキタの説明書にある回転部の注意
回転する部品の近くでは、手袋を着用した作業者の手が巻き込まれる事故が起きています。
軍手を着用した作業者が、回転する部品に手を巻き込まれた事例
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」には、金属加工機械製造業の工場で、軍手を着用したまま旋盤作業をして左手を巻き込まれた事例があります。
回転する部品に紙ヤスリを当てていた作業中の事故で、挙げられた対策の1つが軍手着用の禁止です。事故の型と防ぎ方をまとめた記事が「旋盤事故の主な型と防ぎ方|巻き込まれ・切れ・飛来の対策を解説」です。
マキタの説明書にある、衣服・髪・手袋と回転部の距離
マキタの電気ドリル6300-4の説明書は、使用中に「軍手など巻き込まれる恐れがある手袋を着用しないでください」と記し、回転部に巻き込まれてけがの原因になると述べています。
椎茸栽培用ドリルDD2020の説明書は、髪や衣服、手袋を回転部分に近づけないよう記し、だぶだぶの衣服や装身具の着用も避けるよう求めています。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害事例 No.101304」(旋盤作業での軍手の巻き込まれ)
出典:マキタ「取扱説明書 13mm四段変速ドリル 6300-4」(p.7 注意2)
出典:マキタ「取扱説明書 DD2020 椎茸栽培用ドリル」(電動工具共通の安全上のご注意)
自作せずに市販機・中古機を探すときの見方
市販機や中古機を見るときは、取扱説明書で使い方の範囲が示されているかを確かめます。普通旋盤では、精度の検査項目が規格化されている点も物差しになります。
市販のミニ旋盤
ミニ旋盤は市販されており、種類やできることをまとめた記事が「ミニ旋盤とは?種類・できること・おすすめ機種を初心者向けにわかりやすく解説」です。
市販の木工旋盤
丸棒や木材を回して加工する木工旋盤を探すなら、選び方やバイトの種類をまとめた「木工旋盤とは?選び方からおすすめ機種・バイトの種類まで初心者向けに解説」があります。
中古旋盤を探すときの見方
中古旋盤の選び方は、「中古旋盤の選び方・価格相場・購入先を徹底解説【失敗しない7つのポイント】」を参照してください。
シェアリングファクトリーの中古工作機械の売買
シェアリングファクトリーは、遊休機器を別の会社で活かす、企業間の物品直接売買サービスです
(2026年10月時点)。
工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。
出典:シェアリングファクトリー株式会社 公式サイト トップ(「シェアリング ファクトリーとは。」)
旋盤の自作についてよくある質問
Q1. 自作した旋盤を会社の作業で使っても問題ありませんか?
労働安全衛生規則第101条は、事業者に対して、労働者が作業を行う作業場で、機械の回転軸や歯車、ベルトなどの危険な部分に覆いや囲いを設けるよう義務づけています。
労働安全衛生法は事業者を「事業を行う者で、労働者を使用するもの」と定めており、個人が趣味で自作して使う場合は、直接の対象ではありません。
会社の作業で使うときは、所轄の労働基準監督署などに確認してください。
Q2. マキタの電気ドリルの説明書は、旋盤の動力にすることを禁止していますか?
マキタの電気ドリル3機種、6300-4・M816・DD2020の説明書には、旋盤として使うことについての記載がありません。
43型ドリルスタンドの説明書でも同じです。禁止とも許可とも書かれていないため、使えるかどうかはマキタに確認してください。
Q3. 旋盤や電動工具の事故情報はどこで調べられますか?
製品事故情報とリコール情報は、NITE(製品評価技術基盤機構)の「NITE SAFE-Lite」が検索先です。
2024年4月に事故情報検索とリコール検索を統合してリニューアルされ、パソコンとスマートフォンから利用できます。
Q4. 旋盤作業で手袋は法令で禁止されていますか?
労働安全衛生規則第111条は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがあるとき、事業者が労働者に手袋を使用させてはならないと定めています。
条文に旋盤の名は書かれておらず、規定の名宛人は事業者と労働者です。
Q5. 旋盤の精度検査は、JISの項目をすべて行う必要がありますか?
JIS B 6202:1998の3.4にある規定は「機械を検査するときは,必ずしもこの規格に示されたすべての検査を行う必要はない」です。
検査事項は、使用者が製造業者との合意に基づいて選び、機械を発注するときに明確にするとされています。
なお、JIS B 6201「工作機械―運転試験方法及び剛性試験方法通則」は運転性能と剛性の試験に関する通則で、旋盤の精度検査項目を挙げた規格ではありません。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第101条(原動機、回転軸等による危険の防止)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第2条(定義:事業者)
出典:マキタ「取扱説明書 13mm四段変速ドリル 6300-4」(旋盤の記載の有無)
出典:マキタ「取扱説明書 M816 震動ドリル」(旋盤の記載の有無)
出典:マキタ「取扱説明書 DD2020 椎茸栽培用ドリル」(旋盤の記載の有無)
出典:マキタ「取扱説明書 43型ドリルスタンド」(旋盤の記載の有無)
出典:NITE 製品評価技術基盤機構「NITE SAFE-Lite」(ページ冒頭の説明)
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第111条(手袋の使用禁止)
出典:kikakurui「JIS B 6202:1998 普通旋盤―精度検査」(3.4)
出典:kikakurui「JIS B 6201:1993 工作機械―運転試験方法及び剛性試験方法通則」(1 適用範囲)
まとめ:普通旋盤は精度の規格と説明書の注意を確かめ、市販機・中古機と比べよう
旋盤の自作は、普通旋盤なら精度の検査項目がJIS B 6202に定められ、安全面にはメーカー説明書と事故事例の注意があります。
マキタの電気ドリル6300-4・M816の説明書は指定された用途以外の使用に注意を促し、厚生労働省の事例には軍手を着用した作業者が巻き込まれた記録が載っています。
自作を決める前に、市販のミニ旋盤・木工旋盤・中古旋盤を見比べてみてください。
工作機械の売買・導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
