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放電加工機(EDM)の導入を検討しているけれど、種類が多くてどれを選べばいいかわからない——そう感じている方は少なくないはずです。

形彫り・ワイヤーカット・細穴の3種類の違い、主要メーカーごとの特長、新品と中古の価格差、さらに中古機購入時に必ず確認すべき7つのチェックポイントまで、本記事で一通りわかる構成にしました。

工作機械の中古売買に携わる専門業者として蓄積した実務知見をもとに、スペックや価格の数字も交えながら解説しています。

機械加工とは?種類・加工方法・工作機械の基礎知識をわかりやすく解説も合わせてご覧いただくと、放電加工の位置づけをよりつかみやすくなります。

 

放電加工機とは?基本原理とパルス放電の仕組み

放電加工機(Electrical Discharge Machining、略してEDM)は、電気エネルギーを使って金属を溶融・除去する工作機械です。

切削工具でワークを削る切削加工とは根本的に異なり、電極とワーク(被加工物)が直接接触することなく加工が進むのが最大の特徴です。

切削加工とは?種類・使用機械・メリットと工作機械の選び方まで解説と合わせて読むと、両者の違いがより鮮明になります。

放電加工(EDM)とは何か:切削しない除去加工の仕組み

放電加工は、電極とワークの間に加工液(絶縁液)を介してパルス電圧を印加し、電気火花(放電)の熱でワーク表面を溶融・気化させて除去する加工方式です。

 

英語では「Electrical Discharge Machining(EDM)」と呼ばれ、形彫りは「Die-sinking EDM」、ワイヤーカットは「Wire EDM(WEDM)」と表記します。

切削加工が工具をワークに当てて材料を削り取るのに対し、放電加工は電気エネルギーで材料を蒸発させる「除去加工」の一種です。

刃物では切れない超硬合金や焼入れ鋼のような難削材でも精密に加工できる点が、放電加工の大きな強みになります。

放電加工のメカニズム:5段階のプロセスを解説

放電加工は、1秒間に1,000回〜100,000回という高い周波数でパルス放電を繰り返すことで加工を進めます。

 

1回の放電サイクルは次の5段階で構成されます。

  1. 絶縁破壊:電極とワーク間の加工ギャップ(0.005〜1.0mm程度)にパルス電圧を印加。極間距離が縮まると加工液の絶縁が破壊される
  2. アーク放電(プラズマ生成):放電点に電流が集中し、高温プラズマ(アーク柱)が成長する
  3. 溶融・気化除去:アーク中心温度は6,000〜7,000℃に達し、ワーク表面が溶融〜気化する
  4. 気泡膨張・収縮:周囲の加工液も気化して気泡が膨張・収縮し、溶融金属の微粒子(加工チップ)が飛散する
  5. 絶縁回復:パルス休止中に加工液が流れ込み、次の放電に備えて絶縁状態が回復する

このサイクルを高速で繰り返しながら、サーボ制御(電極とワークの距離を自動制御する仕組み)によって加工ギャップを一定に保ちます。

パルス幅(1回の放電持続時間)は数μs〜数百μsで、荒加工では長パルス、仕上げ加工では短パルスに設定して加工速度と面粗さを調整します。

 

放電加工液の4つの役割

放電加工で使う加工液(絶縁液)は、単なる冷却剤ではありません。

 

加工の品質と効率を左右する4つの役割を同時に担っています。

 

役割

内容

 

絶縁性確保

電極とワーク間の絶縁を保ち、所定のギャップで放電を発生させる

冷却

放電熱で局所的に上昇したワーク・電極の温度を下げる

フラッシング(加工くず排出)

飛散した溶融金属の微粒子を加工部から流し出す

絶縁回復

放電休止中に流れ込み、次の放電に備える

加工液には大きく「油系(絶縁油)」と「水系(脱イオン水)」の2種類があります。

形彫り放電加工機では油系が、ワイヤーカット放電加工機では水系(脱イオン水)が一般的に使われます。

詳しい選び方はh2-4で解説します。

 

放電加工機の3種類:形彫り・ワイヤーカット・細穴の特徴と違い

放電加工機は加工原理と用途の違いから、主に3種類に分類されます。

形彫り・ワイヤーカット・細穴の3種類はそれぞれ得意な加工形状が異なり、現場では用途に応じて使い分けるのが基本です。

3種類の概要をまとめると以下の通りです。

種類

加工原理

主な加工液

代表的な面粗さ

適用形状

 

形彫り放電加工機

電極形状をワークに転写

油系絶縁油

Rz0.5μm(Ra0.06μm)

ポケット形状・キャビティ

ワイヤーカット放電加工機

ワイヤで輪郭を糸のこ状に切断

脱イオン水

1μm台の高精度

貫通形状・輪郭加工

細穴放電加工機

パイプ電極で細穴を貫通

水・油

φ0.04mm〜の細穴・深穴

それぞれの特徴を詳しく見ていきます。

形彫り放電加工機(Die-sinking EDM)

形彫り放電加工機は、銅やグラファイトで作った「電極」の形状をそのままワークに転写するように加工する機種です。

金型のキャビティ(凹形状)や複雑な3次元形状の加工に最も多く使われます。

面粗さは仕上げ加工でRz0.5μm(Ra0.06μm)まで到達でき、鏡面仕上げではRz0.05〜0.2μmレベルも実現可能です。

プラスチック射出成形金型のキャビティ、プレス金型、ダイカスト金型のような「深い凹形状を精密に作る」用途で圧倒的な存在感を発揮します。

電極材料は銅・グラファイト・銅タングステンの3種類が主流で、用途に応じて使い分けます(詳細は後述の電極解説参照)。

一般的な工場では最もよく使われる放電加工機の種類です。

ワイヤーカット放電加工機(Wire EDM)

ワイヤーカット放電加工機は、φ0.1〜0.3mmの細い黄銅ワイヤを電極として使い、脱イオン水の中でワークの輪郭を糸のこのように切り抜く加工機です。

セカンドカット(多重パス加工)を組み合わせることで、最高1/1000mm(μm)台の精度を実現できます。

119,000回超の再生を記録したYouTube動画が「信じられない精密さ」と表現するとおり、その加工精度は圧倒的。

精密金型の輪郭加工、貫通形状の切り抜き、薄板から厚板まで幅広い素材に対応します。

ワイヤ径は細線仕様でφ0.05mmまで使えるため、微細な輪郭形状の加工にも対応できます。

ただし貫通形状専用のため、金型のキャビティのような凹形状(袋穴)には不向きです。

形彫り放電加工機との使い分けが重要になります。

細穴放電加工機(Small Hole EDM)

細穴放電加工機は、中空のパイプ電極を回転させながら送り込み、電極内部から加工液を高圧噴射してパルス放電で細穴を貫通させる機種です。

最小加工径はφ0.04mm(40μm)で、一般的なドリル加工では不可能な超小径・高アスペクト比の穴加工を実現します。

この機種の重要な用途として覚えておきたいのが、ワイヤーカット放電加工のスタート穴(ワイヤを通すための初期穴)を開ける前工程としての役割です。

ワイヤーカット加工では、まずワークに直径0.3〜1.0mm程度のスタート穴を開け、そこにワイヤを通してから輪郭加工を開始します。

この「スタート穴加工」を細穴放電加工機が担うことで、ドリルでは加工できない超硬材や焼入れ鋼のワークにも対応できます。

詳しくは細穴放電加工機とは?仕組み・用途・メーカー比較と選び方を解説をご覧ください。

3種類の使い分けフロー

どの放電加工機を選ぶべきか迷ったときは、まず「加工形状」で判断するのが基本です。

  • 輪郭の切り抜き・貫通形状 → ワイヤーカット放電加工機
  • 電極形状をワークに転写したい・ポケット加工 → 形彫り放電加工機
  • 細穴・スタート穴・高アスペクト比の穴加工 → 細穴放電加工機

複数種類の加工が必要な金型工場では、形彫りとワイヤーカットを両方保有し、細穴放電加工機を前工程に使う構成が一般的です。

 

放電加工機のメリット・デメリット

放電加工機は万能ではありません。

切削加工・研削加工と組み合わせて使うことが前提の特殊加工機であり、どんな場面で使うべきか・避けるべきかを把握しておくことが、設備投資の判断でも日常の現場選択でも大切です。

放電加工機の4つのメリット

放電加工機が現場で重宝される理由は、主に以下の4点にまとめられます。

① 難削材の加工が可能

焼入れ鋼(HRC60以上)・超硬合金・チタン合金・インコネルなど、切削工具では対応困難な硬質材も精密加工できます。

電気を導く金属であれば、硬さに関係なく加工精度を維持できるのが放電加工最大の強みです。

② 非接触加工で工具反力ゼロ

電極がワークに接触しないため、工具からの力(工具反力)が発生しません。

0.1mm厚の薄板や脆性材料(割れやすい素材)でも変形・破損なく加工できます。

③ 複雑3次元形状を一体加工

深穴・狭スリット・鋭角コーナー・アンダーカット形状など、切削工具が届かない複雑形状を一体加工できます。

金型のキャビティや航空機部品の内部構造加工で特に力を発揮します。

④ バリが極小で後工程を削減

放電加工はバリの発生がほぼなく、バリ取り・後処理工程を大幅に省略できます。

生産効率の向上と品質安定の両面でメリットがあります。

放電加工機の3つのデメリットと対策

メリットが多い反面、以下の3点には注意が必要です。

① 電極消耗

放電加工では電極自体も放電熱にさらされ、徐々に消耗します。

特に荒加工時は消耗が早く、定期的な電極交換が必要です。

グラファイト電極は銅電極より耐熱・耐摩耗性に優れるため、消耗を抑えたい場合はグラファイトを選ぶのが現場のセオリーです。

② 加工変質層(ダメージ層)の発生

放電熱がワーク表面に残留し、数μm〜数十μmの加工変質層(再溶融層・熱影響部)が生じます。

この層は硬度・残留応力・組成が母材と異なるため、精密部品では仕上げ加工で除去する必要があります。

低電流・短パルス条件での仕上げ放電を組み合わせることで、加工変質層を最小限に抑えられます。

③ 切削より加工速度が遅い

放電加工は1回の放電で除去できる量が微小なため、切削加工と比べると全般的に加工速度が遅くなります。

機種・条件により差がありますが、量産ラインには向かない点を認識しておく必要があります。

切削加工との比較:どちらを選ぶべきか

放電加工と切削加工のどちらを選ぶかは、加工素材と形状で判断するのが基本です。

判断軸

放電加工が有利

切削加工が有利

 

素材

焼入れ鋼・超硬・チタン・難削材

軟鋼・アルミ・一般的な金属

形状

複雑3次元形状・深穴・鋭角コーナー

単純形状・外形加工

精度

μm台の高精度仕上げ

一般精度の量産加工

加工速度

低速(難削材でも一定速度)

高速(一般材の量産に最適)

コスト傾向

イニシャルコスト高め

設備コスト低め・量産で有利

難削材・複雑形状の精密加工には放電加工、量産・コスト重視の一般形状加工には切削加工と使い分けるのが基本です。

機種・条件により差が出るため、個別の用途に合わせて検討してください。

マシニングセンターとは?種類・構造・価格をわかりやすく解説および切削加工とは?種類・使用機械・メリットと工作機械の選び方まで解説も参考にしてください。

 

 

放電加工機で使う電極と加工液:素材選定のポイント

放電加工の品質は、機械本体だけでなく「電極の素材」と「加工液の種類」に大きく左右されます。

現場で適切な材料を選べるかどうかが、加工精度・電極寿命・ランニングコストに直結します。

形彫り放電加工機の電極材料3種類

形彫り放電加工機で使われる電極材料は、主に以下の3種類です。

材料

主な用途

特徴

コスト

 

銅電極

一般加工・繊細形状

低コスト・形状自由度が高い。熱膨張係数がやや大きく微細加工には注意が必要

グラファイト電極

荒加工・超硬素材

高耐熱・高耐摩耗。機械加工性が良くリブ形状に向く。現場で最も多く使われる電極材

銅タングステン電極

高精度加工・硬質材

銅の柔軟性とタングステンの硬度を組み合わせた特殊材料。鏡面加工や高硬度素材の精密加工向け

グラファイト電極が最も広く採用される理由は、耐熱性・耐摩耗性が高く電極消耗が少ない点にあります。

機械加工で複雑形状を作りやすく、荒加工から中仕上げまで幅広く対応できるため、コストパフォーマンスにも優れた電極材です。

加工液の種類と選び方

放電加工液は、機種によって使うべき種類が異なります。

種別

主な用途

特徴

 

油系(絶縁油)

形彫り放電加工

比抵抗の管理が不要。放電ギャップが小さく精度・面粗さに優れる。加工速度はやや低速

水系(脱イオン水)

ワイヤーカット放電加工

イオン交換樹脂で導電性を管理。加工速度が速い。不燃性で消防設備が不要

水系加工液(脱イオン水)を使うワイヤーカット機では、イオン交換樹脂フィルタで水の比抵抗(電気抵抗)を管理する必要があります。

樹脂が劣化すると水の導電性が上がり、加工精度の低下につながるため、定期的な交換が必要です。

油系加工液と消防法の注意点

油系加工液を使う形彫り放電加工機を導入する際は、消防法への対応が必要になるケースがあります。

油系加工液(絶縁油)は、消防法上の危険物第4類(引火性液体)に該当することが一般的です。

 

一定量以上を保管・取り扱う場合は、各事業所の保有量に応じた届出や許可申請が必要になる場合があり、危険物取扱者の選任や防火設備の設置が求められるケースもあります。

具体的な指定数量や届出の要否は加工液の品種によって異なるため、使用する加工液のメーカーや各自治体の消防本部に必ず確認してください

一方、ワイヤーカットで使う脱イオン水は不燃性であり、消防設備・届出は原則不要です。

 

放電加工機の主要メーカー5社比較(2026年5月時点)

国内の放電加工機市場は三菱電機・ソディック・牧野フライス製作所・ファナック・西部電機の5社が中心を担っています。

各社の技術的な強みと代表機種を把握しておくと、機種選定の精度が上がります。

以下はいずれも2026年5月時点の情報であり、最新のスペック・価格はメーカーに直接ご確認ください。

 

三菱電機 — AI技術「Maisart」搭載のワイヤカット・形彫り

三菱電機はワイヤカットと形彫り両方のラインナップを持つ総合放電加工機メーカーです。

代表機種と特長(2026年5月時点):

機種

種別

特長

 

MV2400R

ワイヤカット中型機

φ0.05/0.07ワイヤ自動供給オプション対応、Digital-FS超仕上電源搭載

MV4800R

ワイヤカット大形機

重電・航空機・自動車の大型部品・金型加工に対応(2019年4月発売)

SV-Pシリーズ

形彫り高精度機

超高精度仕様・鏡面加工対応

特長技術: AI技術「Maisart」を制御に活用し、AI制御装置「D-CUBES」を搭載しています。

自動補正・加工条件の自律最適化によって、オペレーターの技量に依存しない安定した加工品質を実現しています。

中古市場では旧型のFA20SM・FX10Kが流通しており、コストを抑えて三菱機を導入したい場合は中古市場が選択肢になります。

 

ソディック — リニアモータ&省エネ技術のリーダー

ソディックはリニアモータ駆動の採用で業界をリードするワイヤーカット放電加工機の有力メーカーです。

 

代表機種と特長(2026年5月時点):

機種

種別

特長

 

AL400G「i Groove+ Edition」

ワイヤーカット

4軸にリニアモータ採用。タイコレス制御Ⅱ・TMP制御Ⅱ搭載

AGシリーズ

形彫り

ダイレクトドライブリニアモータ採用の形彫り機

リニアモータの強み: ボールねじを使わないダイレクト駆動のためバックラッシ(遊び)がなく、高精度な送り動作を長期間維持できます。

ワイヤ回転機構「i groove」によりワイヤの片面だけが消耗するのを防ぎ、ワイヤ消費量を最大30%削減(2024年5月時点の公式発表値)。

消費電力についても20%削減を実現しており、ランニングコスト改善を重視する工場からの評価が高いメーカーです。

 

牧野フライス製作所 — H.E.A.Tテクノロジーによる高速荒加工

牧野フライス製作所は、独自技術「H.E.A.T テクノロジー」による高速・高精度な形彫り放電加工機で知られています。

代表機種と特長(2026年5月時点):

機種

種別

特長

 

EDAF2

形彫り

H.E.A.T・Hyper-Cut・HS-Rib搭載。高速荒加工と高精度仕上げを両立

EDAF3

形彫り

EDAF2の後継機。さらなる高速化・精度向上

EDNCシリーズ(EDNC6等)

形彫り

小型・コンパクト仕様の形彫り機

細穴放電加工機シリーズ

細穴

タービンブレード冷却穴等の超小径加工に対応

H.E.A.Tテクノロジーの効果: 単位時間あたりの放電エネルギーを増大させつつ異常放電を低減する独自制御で、荒加工速度を従来比で大幅に向上。

「高速荒加工」Hyper-Cutと「高速ジャンプ(HS-Rib)」の組み合わせにより、加工くずを効率的に排出しながら安定した加工を続けられます。

 

ファナック — AIサーボ搭載ロボカットで長時間無人運転

ファナックの放電加工機ブランド「ROBOCUT(ロボカット)」は、AIとロボット連携による長時間無人運転を強みとしています。

 

代表機種と特長(2026年5月時点):

機種

種別

特長

 

ROBOCUT α-CiCシリーズ

ワイヤーカット

XYテーブルストローク400×300mm〜600×400mm、最大テーパ角度±30°

AIサーボ・AI熱変位補正: 加工中の熱変位をAIがリアルタイムで検知・補正し、長時間稼働でも精度を維持します。

 

自動結線(AWT)機能とロボットパッケージQSSRを組み合わせることで、夜間の長時間無人運転が実現します。

 

「工場を24時間稼働させたい」というニーズに直接応える機能構成です。

 

西部電機 — 1972年世界初CNCワイヤ放電加工機のパイオニア

西部電機は、1972年に世界初のCNCワイヤ放電加工機を開発した放電加工機の歴史的パイオニアです。

現行ラインナップ(2026年5月時点):

機種

特長

 

MM50UP

超精密ワイヤ放電加工機。精密恒温室での組立・キサゲ加工による高い精度保証

UltraMM50B

最上位モデル。μmオーダーの超精密加工に対応

MBシリーズ

精密ワイヤ放電加工機ラインナップ

MMBシリーズ

高精密ワイヤ放電加工機ラインナップ

西部電機の品質の裏付けは「製造環境」にあります。

 

機械の組み立ては精密恒温室で行われ、案内面の摺動精度を確保するために職人のキサゲ加工(表面の微細な凹凸を手作業で仕上げる技法)が施されています。

超精密加工向けの機種を選ぶ際には、メーカーの製造環境・品質管理プロセスにも目を向けることをおすすめします。

 

 

放電加工機の価格相場と中古市場の動向(2026年5月時点)

放電加工機は工作機械の中でも価格帯が広い機種です。

新品と中古では価格差が大きく、導入目的や予算に応じた判断が必要になります。

以下の価格情報はいずれも2026年5月時点のものです。

 

新品放電加工機の価格帯

新品の放電加工機の相場は、1,000万円弱〜3,500万円程度(2026年5月時点)が目安です。

機種グレード・加工サイズ・オプション構成によって価格は大きく変わり、高性能・大型機ではこのレンジを上回るケースもあります。

ワイヤーカット放電加工機と形彫り放電加工機では価格帯が重なる部分もありますが、大型・高精度仕様になるほど高額になる傾向があります。

購入時は本体価格に加え、設置工事費・電源工事費・オプション費用も含めた総コストで検討してください。

 

中古放電加工機の価格相場(シェアリングファクトリー在庫実績)

中古の放電加工機はシェアリングファクトリーの在庫実績で約13万円〜440万円(2026年5月時点・在庫により変動します)と、新品の1/3〜1/10以下の価格で導入できます。

実際の在庫事例(2026年5月時点・参考):

メーカー

型番

製造年

参考価格(税抜)

種別

 

三菱電機

DWC110C2

1990

132,000円

ワイヤーカット

メルコメカトロシステム

MEMH8

2005

396,000円

細穴

三菱電機

FX10K

2000

1,210,000円

ワイヤーカット

牧野フライス

U32i

2004

1,298,000円

ワイヤーカット

三菱電機

FA20SM

2004

4,400,000円

ワイヤーカット

中古市場では2000年代前半製造の三菱電機・ソディック・牧野フライスの機種が多く流通しています。

他社中古市場ではU-MACHINEで450万円前後、牧野U53i(2005年式)が230万円前後の事例もあります(いずれも参考値・時点により変動)。

 

新品 vs 中古の選択判断軸

中古が向いているケース:

– 予算が限られており、まず機能確認・技術習得の目的で導入したい

– 特定の加工形状に対して補完的に使う(メイン機は別途ある)

– 保守部品が流通している製造年の機種を選べる

新品が向いているケース:

– 最新のIoT連携・省エネ・AI制御機能が生産効率に直結する

– 長期間・高稼働率での使用が前提でメーカー保証が必要

– 保守部品の入手性・メンテナンス体制を重視する

中古機でも適切なメンテナンスが施された機種であれば十分な加工品質を発揮します。

 

ただし購入前の確認が品質を左右します——次のセクションで実務的なチェックリストを紹介します。

 

中古放電加工機の購入チェックリスト7項目【実務的確認ポイント】

中古の放電加工機を購入するうえで最も重要なのが、購入前の現地確認です。

機械のコンディションを見極めるポイントは複数あり、見落とすと購入後に予想外の修理費が発生するリスクがあります。

中古工作機械の売買に関わる業者として現場で培った7つのチェックポイントを紹介します。

 

電源・電気仕様の確認

まず確認すべきは「機械の電源仕様が設置先の工場と合っているか」です。

確認ポイント:

– 電源電圧:200V/3相(国内の放電加工機のほとんどが三相200V対応)

– 電源容量:機械の消費電力に対して設備の配電容量が十分か

– アース設備・配線工事が必要かどうか

特に古い機種を導入する場合、設備容量が不足していて配線工事が必要になるケースがあります。

工事費込みで総コストを見積もってから購入判断することをおすすめします。

 

NC装置の世代・対応OS確認

放電加工機の性能と使いやすさを左右するのが、搭載されているNC制御装置(数値制御装置)の世代です。

確認ポイント:

– NC装置のメーカー・型番と現行ソフトとのプログラム互換性

– OSサポートの有効期限(WindowsXP搭載機などはサポート終了)

– 加工プログラムの作成環境・CAMとの接続対応

古いNC装置を搭載した機種は、プログラムの作成・転送に専用のPCや変換ソフトが必要になる場合があります。

 

NC装置が現行機種のものと互換性がない場合、将来的な保守部品の調達が困難になるリスクがある点も把握しておきましょう。

 

自動結線装置(AWT)の動作確認

ワイヤーカット放電加工機に搭載されているAWT(Automatic Wire Threading:自動結線装置)は、ワイヤが断線したときに自動で再結線する機能です。

確認ポイント:

– AWT装置が正常に動作するか(実際に結線動作を実演してもらう)

– 結線成功率と再試行回数の設定

– 断線時の自動再起動機能の有無

AWTは夜間の長時間無人運転に必須の機能です。

断線が頻発する条件下でも自動復帰できる機種であれば、人手なしで加工を続けられます。

AWT故障時の修理費は数十万円になる場合があるため、購入前の動作確認は省略しないでください。

 

主軸・サーボの状態確認

機械の加工精度を直接左右するのが、主軸とサーボ軸のコンディションです。

確認ポイント:

– 主軸・サーボ軸の動作時に異音・振動がないか(実際に試運転する)

– バックラッシ(サーボ軸の機械的なガタ)の有無と程度

– X・Y・Z各軸のストロークに引っかかりがないか

精度劣化のサインとして、軸移動時の低周波振動(チャタリング音)と加工面に現れる縞模様があります。

 

試運転時にこれらのサインが確認された場合、サーボユニット交換が必要になる可能性があり、修理費は高額になりがちです。

 

水槽・配管の水漏れ確認

ワイヤーカット放電加工機は脱イオン水の加工液を大量に使用するため、水槽・配管のシール状態を必ず確認してください。

確認ポイント:

– 加工液タンク・水槽の内壁にひびや劣化がないか

– 配管ジョイント部・シール部からの水漏れ(目視・触診)

– フィルタの状態と汚れ具合(交換サイクルの目安になる)

シール劣化による水漏れは放置すると機械本体の腐食・電気系統へのダメージにつながります。

フィルタの交換コストは年間数万円が目安ですが、状態の悪い機種では初期費用として追加計上が必要になるケースもあります。

 

電極・消耗品の付属確認

購入後すぐに稼働させるために、消耗品・付属品の状態も確認しておきます。

 

確認ポイント:

– 付属電極の有無・形状・数量(形彫り機の場合)

– ワイヤ電極の残量と種類(ワイヤーカット機の場合)

– イオン交換樹脂の残量(脱イオン水管理に必要)

– その他の消耗品一式(ノズル・フィルタ等)

付属品がゼロの場合、初期稼働に必要な消耗品を別途調達する費用が数万円〜数十万円かかることがあります。

価格交渉時に消耗品の付属を条件に含めると、実質的なコストを下げられる場合があります。

 

製造年・稼働時間の確認

機械の残余耐用年数を推算するために、製造年と稼働時間を必ず確認します。

確認ポイント:

– 銘板に記載された製造年(シリアルナンバーから製造時期を確認)

– 電源ON時間(パワーオンタイム)の読み取り

– オーバーホール(分解整備)の実施有無と時期

中古市場の主力は2000年代前半製造の機種です。

製造から20年以上経過した機種では、保守部品の調達が困難になっているケースも増えています。

特に電気系統の部品(サーボアンプ・電源ユニット等)は廃番になっていることがあるため、購入前にメーカーまたは専門業者に部品の入手可否を確認することをおすすめします。

 

放電加工機の用途・業界別活用事例

放電加工機が活躍する業界は多岐にわたります。

「難削材を精密に加工する必要がある」「切削工具が届かない複雑形状を加工したい」という共通の課題を持つ業界で特に重宝されています。

 

金型加工:プラスチック金型・プレス金型・ダイカスト金型

放電加工機が最も多く使われるのは金型製造業です。

  • プラスチック射出成形金型のキャビティ加工:複雑な3次元凹形状を高精度で加工するには形彫り放電加工機が不可欠
  • プレス金型の精密打ち抜き部加工:焼入れ後の硬質な型材を精度良く仕上げるのに放電加工が活用される
  • ダイカスト金型の細部仕上げ:ゲート・アンダーカット・細部形状の加工に利用

金型のキャビティ形状は切削工具が届かない複雑な凹形状が多く、電極の形状をそのまま転写できる形彫り放電加工機でなければ対応できない形状が数多くあります。

金型の精度は最終製品の品質に直結するため、放電加工機の性能が製品クオリティを左右します。

 

航空宇宙・医療・自動車・半導体:難削材が多い業界での活用

難削材・高精度加工が求められる4業界では、放電加工機は欠かせない設備です。

 

業界

代表用途

 

航空宇宙

ジェットエンジン・タービンブレードの冷却穴加工(細穴EDM)、ニッケル合金・チタン合金部品

医療機器

ステントの精密穴加工、手術用インスツルメント、義肢の高精度部品(細穴EDM・ワイヤカット)

自動車

エンジン部品・トランスミッション部品の精密加工、燃料噴射ノズルの微細穴(細穴EDM)

半導体・電子

リードフレーム・コネクタ端子のワイヤーカット加工、精密治具の加工

タービンブレードの冷却穴はφ0.3〜0.5mm・深さ数mmという極細深穴で、切削ドリルでは加工できません。

細穴放電加工機が航空宇宙産業で不可欠な理由がここにあります。

 

最新動向:IoT連携・自動化と省エネ

JIMTOF2024(日本国際工作機械見本市2024)でも注目を集めた放電加工機の最新トレンドが、IoT連携・自動化・省エネの3点です。

 

自動化の主要技術:

– AEC(自動電極交換装置):形彫り加工機で電極を自動交換しながら連続加工

– ロボット連携:ファナックROBOCUT+ロボットパッケージQSSRなど、ワーク搬送ロボットとの連携

– AWT(自動結線)との組み合わせによる夜間長時間無人運転

製造業における人手不足が深刻化する中、24時間稼働を目指す工場にとってこれらの自動化技術は競争力に直結します。

省エネの面では、ソディック「AL i Groove+ Edition」シリーズ(AL400G/AL600G)の消費電力20%削減・ワイヤ消費量最大30%削減(2022年11月の公式発表値)のように、機種選びがランニングコストを大きく変えます。

100V電源・専門知識不要で工場内の折れたタップ(ねじ切り工具)を除去できる小型放電加工機「TAPSHOT」のような機種も登場しており、大型機を持てない中小工場にも放電加工の裾野が広がっています。

工作機械全般の選び方はフライス盤とは?種類・加工方法・旋盤との違いをわかりやすく解説も参考にしてください。

 

シェアリングファクトリーで中古放電加工機を見つける

シェアリングファクトリーでは、三菱電機・ソディック・牧野フライスをはじめとする中古放電加工機を取り扱っています(2026年5月時点・在庫により変動します)。

価格帯は約13万円〜440万円と幅広く、導入予算に合わせた機種選定が可能です。

専門スタッフが機種選定・状態確認・納品・設置までをサポートします。

前述のチェックリスト7項目の確認も、ご相談いただければ丁寧に対応します。

工作機械の売買・導入でお困りの際は、シェアリングファクトリーへお気軽にお問い合わせください。

放電加工機についてよくある質問

Q1. 放電加工機で加工できない材料はありますか?

放電加工は「電気を導く金属」を前提とした加工方式のため、プラスチック・ガラス・木材・ゴム・一般的なセラミックスなど、電気を通さない非導電性材料は加工できません

加工できる素材は導電性を持つ金属全般(鉄・アルミ・銅・チタン・超硬合金など)が対象です。

一部の導電性セラミックス(例:炭化ケイ素系)については加工できるケースもあります。

導入検討中の素材が加工対象かどうか不明な場合は、メーカーまたは専門業者に相談してください。

 

Q2. 形彫り放電加工機とワイヤーカット放電加工機の違いは何ですか?

形彫り放電加工機は「電極の形状をワークに転写する」ポケット加工向けの機種で、金型のキャビティのような凹形状に使います。

加工液は油系絶縁油を使用します。

一方、ワイヤーカット放電加工機は「細いワイヤで輪郭を糸のこのように切断する」貫通形状加工向けの機種で、精密金型の型抜き形状やプレート輪郭の加工に使います。

加工液は脱イオン水を使用します。

加工できる形状・電極・加工液がすべて異なるため、必要な加工形状に応じて機種を選ぶ必要があります。

 

Q3. 放電加工機の価格はいくらですか?

新品の価格は1,000万円弱〜3,500万円程度が目安です(2026年5月時点)。

機種グレード・加工サイズ・オプション構成により大幅に変わり、高性能・大型機ではこのレンジを上回る場合もあります。

中古はシェアリングファクトリー実績で約13万円〜440万円(2026年5月時点)と、新品の1/3〜1/10以下で導入できるケースがあります。

いずれも在庫により変動しますので、最新の価格はご確認ください。

 

Q4. 放電加工と切削加工はどちらを選ぶべきですか?

難削材(焼入れ鋼・超硬合金・チタン合金)や複雑形状(深穴・鋭角コーナー・ポケット形状)には放電加工が適しています

一方、量産・コスト重視・一般的な形状の加工には切削加工が向いています

実際の現場では、形状・素材・ロット数・精度要件のバランスを見て選択するのが基本です。

「難削材の精密加工=放電加工、量産の一般材加工=切削加工」を判断の起点にしてください。

 

Q5. 中古の放電加工機を購入するときの確認ポイントは?

購入前に確認すべき7項目があります。

 

①電源・電気仕様(200V/3相/容量)

②NC装置の世代・OS対応

③自動結線装置(AWT)の動作確認

④主軸・サーボ軸の異音・バックラッシ

⑤水槽・配管の水漏れ

⑥付属電極・消耗品の有無

⑦製造年・稼働時間の確認が必須です。

 

特にAWT動作確認と保守部品の入手可否は購入後のコストに大きく影響します。

詳細は本記事のチェックリストセクションをご参照ください。

 

まとめ:放電加工機の選び方と導入のポイント

本記事では、放電加工機の基本原理から種類別の特徴、主要メーカー比較、価格相場、中古購入チェックリストまでを解説しました。

最後に要点を整理します。

 

  • 3種類の使い分け:輪郭切断=ワイヤーカット、ポケット転写加工=形彫り、細穴・スタート穴=細穴EDM
  • 主要5社の特長:三菱電機(AI制御)・ソディック(リニアモータ・省エネ)・牧野(H.E.A.T高速荒加工)・ファナック(無人運転)・西部電機(超精密・1972年パイオニア)
  • 価格相場:新品1,000万円弱〜3,500万円・中古約13万円〜440万円(2026年5月時点・変動あり)
  • 中古購入7項目チェック:電源・NC・AWT・主軸・水漏れ・消耗品・製造年の確認が必須
  • 最新トレンド:IoT連携・自動化・省エネが普及中。小型放電加工機の活用も広がっている

NC工作機械全般に関する基礎知識はNC旋盤とは?仕組み・種類・メリットを初心者向けにわかりやすく解説もご覧ください。

 

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